香港に中国流民主制、「暴走」はどこまで続くか 共産党主導の「法治」、見えぬ西側諸国の対抗策

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究極的には政治的、経済的、軍事的、そして科学技術の分野でもアメリカを凌駕し、アメリカ中心に構築された現行の国際社会のシステムを自分たちに都合よく作り変え、国際社会で主導的地位を確立する。それが習近平のいう「中国の夢」であり「中華民族の復興」であろう。そんな遠大な目標の前で、香港の選挙制度改正は数ある課題の1つでしかない。

民主主義的な政治に慣れ親しんだ立場から見ると、民意が反映されない政治や権力が長続きするのか、やがて国民の不満や批判が爆発するのではないかと思える。

しかし、中国はそれも抑え込むことに自信があるようだ。すでに述べたように共産党一党支配を正統化する教育の徹底は、共産党を相対化するという発想の芽を摘んでいる。また中国共産党はイデオロギーを前面に出すのではなく、経済成長によって生み出される富を国民に配分し続けるという「実利の政治」に重きを置いている。

民主主義の再構築が不可欠

李克強首相は全人代の「政府活動報告」で、「農村の貧困層5575万人が貧困から脱却した」「絶対的貧困の根絶という極めて困難な任務を完了した」と強調した。数字の信憑性はともかく、経済的利益の分配に力を置く政治を強調している。

それ以上に中国の特徴は、最先端のデジタル技術を使って反政府の動きなどを徹底的に監視する「デジタル監視社会」の構築だ。国民一人ひとりの行動がデジタル技術を駆使して管理され、反政府運動の動きだけでなく、犯罪者の逮捕など問題があれば当局が直ちに対応できるシステムが完成しつつある。これは過去にないまったく新しい統治体制である。

今後、中国が西側民主主義制度を否定し、デジタル技術を駆使した共産党一党支配による国家体制の強化と国際社会への挑戦を続けることは間違いないだろう。もちろんこうした「中国の夢」が直線的に実現するとは思わない。

しかし、先進民主主義国の側に、中国に対抗する十分な戦略や覚悟があるのかとなると甚だ心もとない。民主主義制度もさまざまな問題を抱え弱体化が指摘されている。中国を批判することも重要だが、同時に民主主義制度を再考し、より力強いものに作り替えていくことも必要だろう。

薬師寺 克行 東洋大学教授

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やくしじ かつゆき / Katsuyuki Yakushiji

1979年東京大学卒、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸や外務省などを担当。論説委員、月刊『論座』編集長、政治部長などを務める。2011年より東洋大学社会学部教授。国際問題研究所客員研究員。専門は現代日本政治、日本外交。主な著書に『現代日本政治史』(有斐閣、2014年)、『激論! ナショナリズムと外交』(講談社、2014年)、『証言 民主党政権』(講談社、2012年)など。

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