乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが

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英国と欧州大陸を結ぶ高速列車がなくなるという事態を避けるため、仮に破綻手続きが始まったとして、管財人は新規出資者を探す際に「英国―欧州大陸間を結ぶ鉄道サービスを提供できることという条件を付けるべき」(英国の鉄道アナリスト)という考え方もある。

現状ではあまり想像したくないオプションではあるが、それでも欧州ではすでに「ユーロスター」の売却先に関する予想があれこれと語られている。

目下有力視されているのはドイツ鉄道(DB)だ。何度となくドイツとロンドンとの直結を求め、さらにICEの試験車両をロンドン・セントパンクラス駅まで乗り入れるなど、さまざまな仕掛けに及んだが、現在まで実現していない。現在のユーロスターの主力車両はドイツ・シーメンス製で、DBにとっては親和性が高い。

貴重な国際交通をどう維持する?

これは筆者の想像だが、ダークホース的な出資者の候補として香港MTRC(香港鉄路)の名を挙げておきたい。同社は、英国の高速鉄道新線「HS2」の運行オペレーターとしてフランチャイズ獲得に向け、中国の広深鉄路公司とコンソーシアムを組み入札したが、最終候補選出の際に落選した。しかし、MTRCはすでに中国本土から乗り入れる高速鉄道の香港領内での運営、および長年にわたって広州市―九龍半島間を結ぶ直通列車の運行に携わっており、「国際列車」の経験は豊富だ。

ユーロスターの運行がなくなってしまうことは、国際交通インフラ維持の観点から見て由々しき問題だ。それに加え、欧州では環境保護の観点から500~600km程度の移動は航空機でなく列車を利用することが奨励されている。SDGsへの考慮が世界的に叫ばれる中、「島国・イギリス」への鉄道アクセスは残しておくべき貴重な交通インフラのひとつであることは疑いない。

コロナ禍の収束、あるいはワクチン接種の進展など、旅客需要回復までの道のりの予想がつけば、より短期間の融資や支援で延命できる可能性もある。破綻や売却という形での結論は見たくない、というのが大方の意見だ。はたしてどんな格好で生き延びるのだろうか。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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