乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが

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英国ではコロナ禍によるロックダウンが合計3回行われたが、最初の実施からまもなく1年が経つ。ユーロスターの需要はそれ以来、「ほぼゼロ」まで収縮してしまった。運輸関係のアナリストの間では、「ユーロスターのキャッシュフローはこの夏まで持たないのではないか」とする声も聞こえてきている。

一方、「政府による救済の必要はない」と訴える英国民も少なくない。彼らの多くは「経営が厳しいのは理解できるが、株主がその責を負うべきだ」と主張する。

しかし、このまま政府支援など新たな動きがなければ、破綻手続きに入るという懸念も生まれてきている。コロナ禍という想定外の問題であるとともに、そもそも公共性の高い交通インフラをこのまま見殺しにするのは正しい道なのだろうか。

目下の最悪のシナリオは、政府支援もなく新たな出資者も出てこないというものだ。通常の破綻処理は投資銀行などが管財人となり、企業や事業の新たな買い手を探すわけだが、それが振るわない場合は資産を現金に換えて清算を進めることとなる。もっとも懸念されるのは、管財人が車両売却を進めてしまい「英国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車サービス」が消滅してしまうことだ。

最悪シナリオは車両売却

現在ユーロスターで使われている車両は、開業時に導入された「e300」(仏アルストム製11編成)と、ドイツを走る高速列車ICE3と基本設計が同じ「e320」(独シーメンス製17編成)の2タイプがある。e300は20両編成、e320は16両編成と、欧州の高速列車としては長い編成で、全長は両タイプとも約390mだ。

現在の乗車率なら編成両数を減らしてもよさそうだが、車両の構造上の問題だけでなく、ユーロスターはそれができない規程がある。英仏海峡トンネル内部の非常口への避難を前提に編成長が決まっているためだ。

トンネルの非常口は375mごとに設けてあり、編成の長さを非常口の設置間隔以上にすることで、万が一の際、編成中のどこかのドアからより早く非常口にアクセスできることが求められている。このため、需要に応じて編成を短縮するわけにもいかない。

だが、英仏海峡トンネルを通って英国―欧州大陸間を営業運転できる車両は現在、ユーロスター用に使われているものしか存在しないという。関係のない路線に車両が売却されてしまうことは避けたい事態だ。

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