JAL更生計画の混沌、国際線の存続をめぐる攻防に
だが、搭乗率が上がっても高コスト体質のため、赤字脱却は難しい。内部資料「JAL再生計画策定期間の収支考察」では国際線は搭乗率8割という高水準をキープしても赤字が毎月8億円に上ると算出している。
搭乗率7割だった2月は、同資料で見ると73億円の月次赤字に膨らんだ。安定した黒字経営には9割近くの搭乗率が必要としているが、実現は難しい。
金融機関などに配慮してリストラ案を自ら上積みしたが、国際線中心の計画に変更はなかった。稲盛和夫会長は就任以来、「国際線のないJALは考えられない」と繰り返し主張。社内からも「景気が戻れば、国際線は収益柱になる」との意見がいまだ多い。
これに対して国交省は「JALは本当に出直す気があるのか」(幹部)とあきれる。前原誠司国交相は4月初旬の会見で「機構の再生計画を着実に実行することで始まったが、その後の需要や景気などを勘案してさらなる深掘りが必要だと(稲盛氏に)話している」と発言。一層のリストラへの“圧力”をかける。
稲盛会長更迭論も浮上
一方、巨額の債権放棄を迫られた主要金融機関は、国際線の完全撤退や欧米から撤退してアジアに集中、欧米・アジアの主要路線のみ残す、など複数案を迫っている。
あるメガバンク関係者は「まずドラスチックなリストラが必要。そうでなければ今後の融資どころではない」と話す。
国際線を残す場合でも、8割削減が最低ラインと譲らない。現在、メガバンク3行はそろって残債の完全買い取りを機構側に要請しており、溝は深まる一方だ。