三陸鉄道「特別列車」30人の乗客だけが聞いた話

3月11日の記憶を社員が語り継ぐ4時間半の旅

東日本大震災から10年が経った2021年3月11日に三陸鉄道を走った「3・11を語り継ぐ 感謝のリレー列車」(記者撮影)
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震災当時の体験を話していた女性駅員が突然声を詰まらせた。一方で、ベテラン駅員は「入りたくて入ったのではなく、なんとなく入った会社だったが、鉄道が復活したときの地元の人たちの喜ぶ様子を見て、この会社で働いてよかった」と話す。

東日本大震災から10年経った2021年3月11日、岩手県沿岸部を走る第3セクターの三陸鉄道は「3・11を語り継ぐ 感謝のリレー列車」という特別列車を運行した。盛―久慈間163kmを4時間半で走行し、三鉄の社員が東日本大震災当時の様子などについて写真を見せながら説明するという同社初の試みだ。

岩手県内の犠牲者は死者、行方不明者合わせて約6000人。「追悼の思いを込めて運行するが、追悼だけでなく二度と犠牲者を出さないための取り組みにつなげていただければ」と、中村一郎社長が運行の狙いを語る。

3密を避けるため乗客の人数は約30人に抑えられた。参加者は岩手県在住者のほか首都圏、関西圏など全国に及ぶ。

車窓から知る津波の脅威

特別列車の車両にはボランティアや自衛隊員、外国人など支援してくれた人をイメージしたイラストが描かれた真新しいラッピングが施されている。「数日前に完成したばかり。県が3月11日を震災・津波を語り継ぐ日として定める条例を制定した。その趣旨を伝えるため車両にラッピングしていただいた」と、中村社長が教えてくれた。

車両には復興を支援した人々をイメージしたラッピングを施した(記者撮影)

12時ちょうどに列車は盛駅を出発した。最初に説明に立ったのは山蔭康明さん。車窓から見える防潮堤を指差しながら説明した。「上下で色が違いますよね。下の黒っぽく見えるのが震災前からあった防潮堤です。津波がこれを乗り越えたので、新たにかさ上げしました」。

車窓から見える電柱には、1896年に起きた明治三陸大津波には海抜38.2mまで到達したことを示すという表示があった。「津波はこれほど高いところまで来ると昔から言い伝えられてきたので、地震が来ると、みな少しでも高い場所に避難するようになりました」。

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