42年ぶり復活「多摩湖駅」、複雑な西武線の歴史 同名や似た名の駅が複数誕生、ややこしい変遷
西武鉄道の多摩湖線と山口線の乗り換え駅である西武遊園地駅が、2021年3月13日のダイヤ改正と同時に「多摩湖駅」に改称された。これは同駅に隣接していた西武園ゆうえんちの正面口が、リニューアルによって閉鎖されるためだ。新しいメインゲートは山口線の遊園地西駅が最寄りとなり、同駅は「西武園ゆうえんち」駅に改称された。
西武遊園地駅は1979年に多摩湖駅から改称された。つまり多摩湖駅という駅名は42年ぶりに復活したことになる。また、この西武遊園地駅は実は二代目で、かつては別の場所に山口線(二代目)の初代西武遊園地駅が存在していた。さらに、西武遊園地駅付近には西武鉄道西武園線の西武園駅も存在する。
そもそも半径300mほどのエリアに同じ鉄道事業者の複数路線の駅が独立して存在するというのも不思議な話だが、これは多摩湖線、山口線(初代・二代目)、西武園線、さらには狭山線の生い立ちが関係している。そこでこのエリアの西武鉄道各路線の複雑な成り立ちを紐解いてみた。
昭和初期に生まれた「多摩湖」
多摩湖とは、1927年に造られた人造湖である村山貯水池の通称だ。多摩湖の西側にある山口貯水池、通称狭山湖とともに、東京の水がめとして重要な役割を果たしている。
完成当時の村山貯水池は、観光スポットとして注目された。おりしも1925年10月に東京都北多摩郡国分寺村―東村山村間の鉄道免許を得ていた箱根土地株式会社が、1927年11月16日に東村山村萩山―同村村山貯水池間の鉄道免許を取得した。この箱根土地という会社は、後の国土開発計画株式会社→コクドで、かつては西武グループの親会社だった。
同社は1928年1月に多摩湖鉄道を設立し、同年4月6日に国分寺―萩山間を開業。続いて1930年1月23日に村山貯水池駅(仮)まで延伸した。これが多摩湖線の前身である。仮駅となったのは、後述する川越鉄道箱根ヶ崎線(通称)のルートが未確定だったからだ。
多摩湖鉄道は川越鉄道箱根ヶ崎線のルートが確定した後に正式な駅を開業させることにし、当面は仮駅からバスで観光客を輸送することとした。仮駅の場所は、現在の多摩湖線回田(めぐりた)信号場の西端付近だった。
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