バイデン政権入りした「GAFA解体論者」の正体 オバマ政権時のリベンジを果たせるか
ウー氏は、今日のアメリカ経済は悪徳資本家が跋扈した19世紀末の金ぴか時代に似てきていると話し、一握りの企業が力を持ちすぎるのは危険だと警鐘を鳴らす。
「富の極端な集中は巨大な格差につながり、貧困に苦しむ人々を多数生み出すことになる。そうした状況では、国粋主義を掲げる過激なリーダーを待ち望む声が強まりやすい」。ウー氏は2018年の著書『The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age(原題)』にそう記した。
「私たちの日常生活で特に目立つのは、グーグル、フェイスブック、アマゾンをはじめとするテックプラットフォームの巨大な力だ」(ウー氏)
新設の特命ポストにGAFA解体論者
競争政策に特化したウー氏のポジションは、NECで新設となる。同氏は、企業が従業員に押しつけている競業禁止規定のほか、農業や製薬業界で力を増す大企業の存在も重要問題として扱うことになる。ちなみにホワイトハウス高官への起用は、閣僚と違って上院の承認を必要としない。
バイデン氏はまだ、司法省反トラスト局の局長と連邦取引委員会(FTC)の委員長を公式に指名していない。どちらも商業分野の競争を規制する主要機関だ。革新派は、テック企業やテック企業をクライアントとする法律事務所の出身者ではなく、ウー氏のような左派の論客をこうしたポストに据えるべきだと声高に訴えている。
「ティムは長きにわたって反トラスト法を擁護してきた。巨大テック企業を解体し、コントロール下に置くべきだと当局にも迫ってきた」。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)は「彼がこの役職に就くことをうれしく思う」とする声明を発表した。
ウー氏はこれまでに何度も学界を離れ、政府の役職に就いてきた。オバマ政権では2011年と2012年にFTCの特別顧問を務めた後、NECで競争政策の策定に携わっている。オバマ政権はフェイスブック、グーグル、アマゾンといったテック企業への対応が生ぬるかったことで有名だが、ウー氏はその後、後悔の弁を口にするようになった。