「シナリオにない巨大災害」乗り切る防災技術  東日本大震災から10年で進化したテクノロジー

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もともと防災は、災害時に発生する被害を想定することで、事前に対策を講じておく「事前防災」という考えを基本にしていました。災害発生時に起こりうる被害内容の「シナリオ」があり、それに対して事前に対策を取っておくということです。

河川が氾濫しないように堤防を作っておくとか、地震が起きても倒壊しないように耐震を強化するとかいったものから、大きな災害が起こったときにはどう避難するかとかいったハザードマップや避難所地図のようなものなど、それらは災害時に想定される「シナリオ」に基づいて行っています。

しかし、近年発生している災害では、その「シナリオ」どおりにいかないケースが多くなっています。東日本大震災もその一例ですが、日本は地震大国なので長年しっかりとした地震対策・津波対策をしてきたはずなのに、東日本大震災が発生したときには、なすすべもありませんでした。それは、災害がこれまでの想定を超えてきたからです。

九州や西日本で発生した集中豪雨もそうでしたが、何十年に1回とか何百年に1回といわれる量の雨が一気に降り、甚大な被害が起こしてしまう。また、かつてないような巨大で強い台風が来たりするなど、地球温暖化や気候変動によるものと見られる、これまで想定していたもの以上の災害が近年日本を襲ってくるようになっています。

「想定外」に対応する「リアルタイム防災」

災害時に防災担当者が記者会見で「想定外でした」というコメントがよく聞かれます。ただ、いつまでも「想定外」で手をこまねいているわけにはいきません。こうした災害にも柔軟に対応していくためには、「事前防災」だけではなく、「リアルタイム防災」という考え方が必要です。

想定外のことが起きたとしても、それに対して瞬時に対応していくためには、先に述べたさまざまなビッグデータをタイムリーに解析することで、今何が起きているかを把握し、このあと起きることを予測、そしてどう対応すればよいかを判断する必要があります。

短時間に大量のデータを解析する必要があるので、「リアルタイム防災」を実現するにはAIの活用が必須となってきます。AIを活用することで、今起きていること、これから起こることを瞬時にシミュレートし、想定外の規模の災害にも柔軟に対応していく、そういったことが、東日本大震災から10年を経た今、実現しつつあります。

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