菅首相、違法接待で「谷脇切り捨て」の罪深さ 懐刀の官僚を更迭、避けられぬ首相の政治責任

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菅首相はこれに対し、「政治責任の定義というのはないんじゃないでしょうか」と開き直り、「結果については家族としてお詫びする」と頭を下げながら、自らの政治責任に踏み込むことは避けた。ただ、与党内にも「誰が見ても菅首相の政治責任は免れない」(閣僚経験者)との声が出ている。

そうした中、東北新社が「BS4K」放送の認定を受けた後に外資規制に違反していたにもかかわらず、総務省が認定を取り消していなかったことも発覚した。

菅氏長男は東北新社を退社する意向

国会における野党の追及に対し、総務省は「違反を当時認識していなかった」と釈明したが、武田総務相が「必要な対応をしていきたい」と苦々し気な表情で答弁。総務省内でも「違法が確認されれば認定を取り消すべきだ」と意見が多く、近くBS4Kの認定が取り消される可能性も出てきた。

その一方、東北新社は菅首相の長男を懲戒処分とし、部長職を解任。人事部付にした。これに合わせて長男は、同社子会社の取締役も辞任。関係者によると「東北新社も退社する意向」だとされる。

一連の「菅首相絡みの違法接待事件」(立憲民主)の大騒ぎにもかかわらず、最新の世論調査では内閣支持率が回復の兆しを見せている。「接待問題より、コロナの感染者減とワクチン接種に国民が関心を持った」(世論調査アナリスト)と解説されている。緊急事態宣言の再延長も過半数の支持を得ており、違法接待問題の影響は軽微だ。

このため、菅首相周辺には「谷脇、山田両氏の辞職や関係者の処分と長男の退社で、違法接待問題は幕引きできる」との楽観論が広がる。まさに、「安倍前政権から続くお定まりの逃げ恥作戦」(自民長老)だ。ただ、15日の参院予算委集中審議でNTTの澤田純社長の参考人招致が決まっており、「今後の展開はまだまだ予断を許さない」(同)。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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