菅首相、違法接待で「谷脇切り捨て」の罪深さ 懐刀の官僚を更迭、避けられぬ首相の政治責任
谷脇氏は東北新社による総額11万円超の違法接待で懲戒処分(減給)を受けたばかり。総務省は中立性と公平性の確保のため、検事出身の弁護士を含めた第三者調査組織を設置し、全容解明を急ぐ方針だ。
武田総務相は9日、「調査を徹底するため、期限は示せない」と述べたが、与党内には「2021年度予算成立前の3月中にも結果を公表し、関係者の処分も決めて一件落着とすべきだ」(自民幹部)との声が多い。
谷脇氏は総務省大臣官房付きとなった時点で一般職公務員となり、60歳になった後の3月末に定年退職する。ただ、その前に同氏の新たな懲戒処分が固まることを前提に、「定年を待たずに依願退職する」(政府筋)との見方も広がる。
旧郵政系の事務次官候補は皆無に
谷脇氏の降格人事に関連して武田総務相は、「後任の総務審議官は当面置かない」との方針を示した。ただ、今後の国会対応などを考慮すれば、違法接待についての最終的な調査結果と関係者の処分が確定した段階で、谷脇氏の後任も含め、幹部人事を含めた大幅な異動を行わざるをえない。
総務省は、中央省庁再編で自治省、郵政省、総務庁の旧3省庁の統合により発足した。戦前の最強官庁・内務省の系譜にもつながり、内閣では各省庁の一番手に位置する。谷脇氏はその総務省の旧郵政系トップだった。
同省は発足の経緯から、歴代事務次官は旧自治省と旧郵政省の出身者による「たすき掛け人事」が慣例化。黒田武一郎・現事務次官は旧自治省出身であり、次は旧郵政出身の次官就任が既定路線とみられていた。
しかし、最有力候補だった谷脇氏が外れることで、当面は黒田次官が続投せざるをえない。しかも、谷脇氏に続く旧郵政系の総務省最高幹部はほとんどが違法接待の処分対象だ。今後の調査で違法接待の実態が解明されれば、さらに処分者が増える可能性もある。そうなれば「幹部で生き残れるのは少数」(政府筋)とみられており、「年次的にも旧郵政省系の次官候補を見つけるのは至難の業」(同)というのが実態だ。
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