エアアジア、「捲土重来」に懸ける真の狙い 平成の"黒船"は真っ赤な機体でやってきた
三木谷氏は「政府は(2013年に初めて1000万人を突破した)訪日外国人旅行客を2020年に2000万人へ倍増する目標を掲げているが、それにはLCCが欠かせない。日本の航空産業は、高い空港使用料や空港の24時間利用が進んでいないことなど課題が山積み。日本の空を本当にオープンにしていく。エアアジア・ジャパンの一株主ではあるが、発展に少しでも貢献したい」と抱負を語った。
グループに旅行事業を展開する楽天トラベルを持ち、EC(電子商取引)における連携など、エアアジアが楽天と組むメリットはある。何より、安倍晋三首相と個人的な関係があり、規制緩和論者でもある三木谷氏の持つ政治力を得ることはもっと大きい。エアアジアの狙いはずばり、羽田空港を拠点にした国内線の就航だ。
新生エアアジア・ジャパンは登記上の本社を中部国際空港(セントレア)のある愛知県常滑市に置いた。旧エアアジア・ジャパン時代の反省から、着陸料が高く、発着時間に制限のある成田を外し、15年の就航当初はセントレアを拠点に国内線のネットワークを張っていくとみられる。
ただし、会見における報道陣との質疑応答で、小田切社長は「マーケットの大きさや、インバウンド需要を考えると東京は外せない。発着枠の問題があり、現状は空きスロットがないが(いずれは)羽田空港を拠点に就航したい」と語った。
背景に都心上空の飛行解禁議論
現状、羽田空港の国内線発着枠は日本航空(JAL)、ANA、スカイマーク、スターフライヤー、スカイネットアジア航空、AIRDOに限定されている。混雑する羽田の発着枠に空きはないが、アテはある。これまで騒音を理由に認めてこなかった都心上空の飛行解禁の議論が始まったからだ。
国土交通省の有識者会議は今年6月、羽田、成田両空港の発着枠拡大案をまとめた。2020年の東京五輪を控えて、訪日外国人旅行客を拡大するために必要な措置という位置づけで、滑走路の処理能力を再検証し、運用や飛行経路の見直しなどで、年間約2.3万~2.6万回の発着枠を増やせると試算している。
実現すれば、国内外の航空会社に羽田の発着枠が新たに割り当てられることになる。新生エアアジア・ジャパンはこれを狙いに行く。現状、日本には3社のLCCが就航しているが、羽田を拠点にした例はない。
三木谷氏は経団連や経済同友会など既存の経済団体に対抗する格好で、新経済連盟を立ち上げている。持論は「規制緩和」。エアアジアという外圧を得て、日本の航空業界に市場開放を迫っていく構図が想定できるが、その目玉は羽田の“開港”にある。実現性はともかくとして、日本の航空業界に波紋を呼ぶことは確実だ。