「日経平均急落後の3月相場」をどう乗り切るか 市場の現状を知れば波乱でも「百戦危うからず」
ここで、裁定取引の残高が相場のセンチメントを表す理屈をもう少しだけ補足しよう。市場に先安観があると、先物に売りが出て現物より先物が安くなると裁定機能(安い先物を買って高い現物を売る)が働き、現物売り残がたまる。
このたまった売り残を株数で表すと、2020年6月12日は7億5888万株(このときの買い残1億4572万株)の弱気センチメントだった。これが、先週の3月3日時点では4億2446万株(同買い残4億1736万株)となり、ほぼ売り残と買い残が拮抗している。
つまり、弱気エネルギーをバネに上昇してきた相場は、買い戻しが済んでひとまず踊り場に入ったことを表しているというわけだ。これからはマネーの動きと業績の推移を見ながらの神経質な展開になることが予想される。
「エレベーター相場」を経た4月以降に期待
さて当面の相場はどうなるだろうか。5日に発表されたアメリカの2月の雇用統計は、その前に発表された2月ADP雇用リポート、2月ISM非製造業景況感指数、新規失業保険申請件数などが悪化していたため、若干懸念材料でもあった。
だが、結局出てきた数字は、予想外に強いものだった。3日に公表になっていた地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、アメリカ国内経済の回復が1月から2月中旬にかけて控えめになったという認識が示され「労働市場の改善ペースは鈍い」と指摘されていたのでなおさらだった。
この雇用統計の数字は、 低調な3月相場の下値を支える材料になりそうだ。例年、3月は決算数字を整えるため、企業活動は活力を欠き、ファンド筋も資金の出し手の決算に響く積極的行動は取らない。そのため、相場がぶれたときには逆張りの手口が出しにくく、乱高下しやすい月だ。
欧州では3日、ドイツ連邦銀行(中央銀行)が「今年の利益の政府納付を見送る」と発表した。万一の事態に備え引当金を積み増すためで、同行が納付を見送るのは1979年以来、およそ40年ぶりのことだ。
いかなる事態にも対処する決意の表れと同時に、大きなリスクも感じている証拠でもある。ただし、上下動が激しいエレベーターのような3月相場ではあるが、根本は不変だ。くれぐれも売り勢力に振り回された揚げ句に「下の階」で下りないよう気をつけつつ、4月以降に期待したい。
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