中国に禁輸された台湾パイナップル問題の本質 蔡英文政権の対外経済政策に農家から批判の声も

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会見で、農業委員会の陳吉仲主任委員(大臣に相当)は、台湾産フルーツは今、新たな市場を開拓している最中であり、一朝一夕に中国集中から脱却するのは難しいと説明。しかし政府は可能な限りのリスク分散に努めていくと表明した。

例えば、2021年の台湾産パイナップルの日本向けの輸出量は5000トンに上ると見られている。実現すれば、史上最大の輸出量となる見通しだ。現在、農業委員会は、貿易業者には一致団結し、恣意的な価格競争を避けるようにと呼びかけているそうだ。

しかし、そんな政府に対する農家の反応は芳しくない。台湾の専業農家のコミュニティ「Lin Bay好油」は、2020年3月に蔡英文総統がFacebookで農産物の輸出市場の開拓を掲げる投稿をしていたことを指摘。その投稿には蔡総統がパイナップルと共に飛行機に乗ってオーストラリアに向かうイラストが添えられていた。

台湾農家「輸出多角化の成果は大きくない」と批判

だが実際のところ、財務部関務署(財務省関税局に相当)のデータによると、2020年に台湾からオーストラリアへ輸出されたパイナップルはわずか56キロ、それも生のパイナップルは含まれずドライフルーツのみであるという。2021年に至っては、現段階ではドライフルーツのパイナップルですらオーストラリアには輸出されていない。

台湾政府は農産物の輸出市場開拓に注力すると言いながら、結局のところ宣伝のみに終わっており実際の成果は大きくないとして、農家からは落胆の声が上がっている。

国民党の呂玉玲立法委員もFacebookで、2020年3月から現在までのオーストラリア向け台湾産パイナップルの輸出額はわずか13万台湾ドル(約50万円)だったと指摘した。パイナップルの産地の1つである嘉義県政府農業部の前の責任者である林良懋氏は、「台湾人のフルーツの平均消費量はすでに世界一になっている。今後、政府は内需を奨励するだけでなく、これを機に主に栽培されているパイナップルの品種を貯蔵と輸送に強い品種へ転換すべきだ」と述べている。

今回のパイナップルの問題では、日本の受注増加のように政府のPRは一定の成果を挙げている。だが、輸出先が中国に一極集中している農産物はパイナップルだけではない。政府には農産物を守るための抜本的な対策が求められるだろう。

(「今周刊」2021年3月2日)

台湾『今周刊』
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