台湾・蔡政権が日本の新首相に期待するもの

日本と台湾の間に必要なのは安全保障対話だ

8月末、台湾を訪れたチェコ上院議長のミロシュ・ビストルチル氏一行を迎えた台湾の蔡英文総統(写真:CTK/時事通信フォト)
8月28日の安倍晋三首相による退陣表明は、台湾にも強い衝撃を与えた。7月末に知日派として知られた李登輝元総統が亡くなった直後、日本からは森喜朗・元首相が弔問で訪台するなど、日本との関係が改めてクローズアップされたところだった。
現在の蔡英文総統が2016年に就任して以降、日台は結びつきを強めている。安倍首相は特に、中国との関係に配慮しながら台湾にも強い関心を示していた。そこで、台湾から安倍退陣後の日本をどう見ているか。台湾のシンクタンク・台湾智庫副所長を務めるなど著名な国際政治学者である賴怡忠(I-Chung Lai)氏に、日台関係や今後の東アジア情勢について話を聞いた。

日台の相互信頼関係は良好

――安倍晋三首相の任期中の日台関係は、相対的に良好なものだったのではないでしょうか。特に蔡英文政権になり、経済・政治的な関係も緊密になったように見えます。現在の日台関係を、どう評価しますか。

確かに、日台関係は安倍政権中に急速に発展したと言える。しかも、党派を越えて発展してきた。中国国民党(国民党)の馬英九政権当時(2008~16年)、安倍首相は尖閣諸島周辺海域における漁業権問題に積極的に取り組むと同時に、民主進歩党(民進党)ともTPP(環太平洋経済連携協定)問題について何度も話し合ってきた。

特に民進党が政権を握った後に進められてきた日台間の海事に関する対話は、日台間の経済対話に続くもう1つの公式の対話となった。これまで日本政府は台湾に対し、何回も支持やお祝いなどのコメントやメッセージを発表してきた。実際に、日台両政府のコミュニケーションの頻度は上がり、1972年の日台断交から初めて、日本の副大臣が公務で訪台するなど、日本の政治家の関与もグレードアップした。これは過去に例を見ないものだ。

――安倍首相の台湾への強い関心を、台湾は好意的に受け止めているということでしょうか。

そうだ。安倍首相個人が、台湾への連帯と支持を持っていることは台湾にも十分伝わっている。相互の信頼関係もとても良好だと言えるだろう。今後、日本に安倍首相ほど台湾に心を寄せて支持するリーダーが現れるかどうかはわからない。しかし、確実に言えるのは、安倍氏が台湾に深い印象を与えた人物だということだ。

とはいえ、あえて安倍政権と台湾との問題を指摘するならば、日台間の安全保障問題がまだ十分ではないということだろう。蔡英文総統は安全保障問題について日本との対話を望んでいるが、いまだ実現には至っていない。台湾海峡や西太平洋情勢は、日に日に緊張感を増している。日台間の安保対話は、台湾と日本、そしてインド太平洋地域の安全にとって非常に重要だ。日本の次期首相が、この問題に取り組んでくれることを願っている。

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