台湾・蔡政権が日本の新首相に期待するもの 日本と台湾の間に必要なのは安全保障対話だ

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――2020年11月のアメリカ大統領選挙の結果が台湾へもたらす影響を、現段階でどう見ていますか。トランプ大統領の再選、あるいはバイデン候補の当選といった場合に、台湾はアメリカとどのような関係を深めることになるでしょうか。

大統領選で仮に政権交代が行われたとしても、アメリカの対中政策に影響はないと見ている。しかし、政党が変われば対中政策の具体的な内容や、どのような政策を重視するかという細部は変化するだろう。例えば、バイデン氏は中国との貿易戦争を行わないと主張しているといったものだ。また、バイデン氏はトランプ大統領がアピールする「アメリカファースト」ではなく、同盟国との関係修復も重視している。

台湾は、アメリカの共和党、民主党とは十分に密接な関係を築いている。ただ、バイデン氏が当選した場合、現在のトランプ政権ほど台湾を支持するかどうかは注意深く見ていく必要があるだろう。

アメリカの対台湾「6つの保証」は有効

アメリカ国務省は最近、レーガン政権時代の1982年に台湾の安全保障に関するアメリカの姿勢を記した「6つの保証」の機密文書指定を解除し、内容を公表した。これは、台湾への武器供与や台湾関係法、台湾の主権に関する立場などに関するアメリカの立場を示したものだが、この6つの保証は現在でも米国の対台湾政策の基礎となるものであり、さらに新たな米台経済・商業対話を構築する考えを表明している。

6つの保証とは、米台関係を建築物にたとえるなら、建物の土台となる杭打ち工事のようなものであり、このような杭があって初めて、具体的な政策や対話が持続可能なものになる。これこそ、米台関係の安定化にとって重要なものだ。

――グローバル社会に衰えが見え、地域主義・孤立主義が息を吹き返そうとしています。その分、台湾がこれまで築き上げてきた「民主主義」や「人権」、そして多様性という歴史的成果と価値は、国際社会でもより多くの関心を集めています。これが、国際社会における台湾の活動の場を広げることにはなりませんか。

現実の世界が持つ基本的枠組みから抜け出せないとしても、民主主義は台湾が国際社会で生きるための基本だ。今、台湾は中国からの圧力にさらされ、国際社会からのより一層の支持を必要としているのが現状だ。

とはいえ、台湾自身が民主主義を維持できなかったら、台湾への支持を他国に期待できるだろうか。台湾はこの9月、チェコ上院議長率いる90人が台湾を訪問してくれたことに対し、非常に感謝している。彼らの訪台は、自由と民主主義への支持の表明であり、同時に覇権主義への反対の表明だ。

台湾はもはや、金に物を言わせる小切手外交を行うことはない。だが反対に、中国は台湾と国交を持つ国を奪おうと小切手外交を大々的に行っている。それでも、台湾は民主主義を放棄することはない。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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