台湾・蔡政権が日本の新首相に期待するもの

日本と台湾の間に必要なのは安全保障対話だ

賴怡忠(I-Chung, Lai)/1966年生まれ。台湾成功大学卒、米バージニア工科大学博士。民主進歩党駐米代表処、台北駐日経済文化代表処、民進党中国事務主任などを務める。

――蔡英文政権は日本に対しどのような政策・戦略を持っているのでしょうか。中国の存在を意識しながらも、台湾との関係をよくしていきたいと考えている日本の政治家は少なくありません。

蔡政権は日本をとても重視している。日本は台湾にとって非常に重要なパートナーだ。しかも、日台が共有しているのは「自由民主主義」という政治的価値観だけではない。経済においても同様だ。蔡政権は日本と自由貿易協定(FTA)の締結ができることを期待している。また台湾は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTTP、TPP11)への加入を目指しているが、これにも日本の支持と協力が必要だ。

安全保障面では、例えば2005年2月19日に発表された日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)での共同発表以降、台湾海峡の平和が日米同盟において追求すべき共通の戦略目標となって久しい。台湾海峡の平和は、台湾の安全保障にとってキーポイントだ。台湾を国際社会から排除しようとする中国の姿勢に対抗し、台湾が国際社会とつながり参加していくためには、日本との緊密なコミュニケーションと連携が必要だ。

――安全保障面では、中国との関係をどうするかという難問が待ち構えています。台湾をめぐる日中関係は、台湾からどう見えていますか。

台湾が持つ「台湾問題」、すなわち中国との主権帰属をめぐる問題と、「台湾は台湾、中国人ではなく台湾人だ」とする、いわゆる「台湾のアイデンティティー問題」を考える場合、その切り口は「日本統治時代をどう解釈するか」にあると言える。

対中関係は日本統治時代の解釈をめぐる問題

第2次世界大戦では、中華民国は日本と戦った。だが当時の台湾は日本の一部だ。そればかりか、少なくない台湾の民衆が天皇に忠誠を誓い、積極的に従軍した。しかし戦後、これらの日本統治時代の歴史は国民党により闇へ葬られた。さらに戦前の台湾が深いところまで日本化していたため、統治するようになった国民党は台湾民衆の権利を剥奪した。これにより、後に台湾で展開されることになる、戦後に台湾に移り住んだ「外省人」という一部のエスニシティ(族群)による独裁政治の基礎となった。

国民党の馬英九政権は、中国からの圧力に際し、日本に強硬な態度を取ることで中国との友好関係を築いてきた。中国は台湾が第2次世界大戦をはじめとする歴史問題に対し、日本にどのような態度を取るかで、台湾が中国とどうしたいのかといった態度を推し量ることが多い。つまり、台湾の中台統一派は親中であるだけでなく反日であることが求められるのだ。

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