台湾オードリー・タン「透明性」への驚異の信念 「討論プラットフォーム」の経緯から見えること

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「当時の〈リバース・メンタリング制度〉は、リバースメンターたちが政府の中で見聞きしたことを、外部に公開してはならないというルールがありました。私は透明性を重視していますから、それは無理だとジャクリーンに伝えました。そこで彼女は、〈プロジェクトの外部コンサルタント〉という別の形で私を起用したのです」

この言葉からも、オードリーが仕事にいかに透明性を重んじているかが、よく伝わるのではないだろうか。私が本書のコラムインタビューのためにジャクリーンの元を訪れる直前、オードリーに彼女はどんな人物かと訊くと、「オープンで人見知りせず、民間から自分よりよい考えが出てくるのを恐れない、まったくメンツの問題を持たない人物ですよ」と教えてくれた(本書にはジャクリーン・ツァイ元大臣へのインタビューも収録している)。

最後の砦「国会の透明化」

「ジャクリーンは、権力は政府に集中するものではなく、民間の想像力こそ大事にされるべき、という考えを持っています。この考え方は私とまったく同じですが、戒厳令が敷かれていた時間を私よりも長く過ごしているからか、彼女のほうがより強い気持ちで物事に向き合っていると思います。戒厳令下でも民間にいい考えはたくさんありましたが、政府に対して何も意見することはできませんでしたから。

『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』(ブックマン社)
(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

彼女は法律の専門家として、いい法律を設計しさえすれば、政府が権力集中に向かうのを抑え、民間が主体となって大部分をイノベーションしていけるはずだ、と話してくれました」

「私は入閣を機に、〈vTaiwan〉の運営をほかのメンバーの手に引き渡しています。私が関わっていた頃には行政院をより透明に、市民の近くにするにはどうしたらいいかを討論するだけでしたが、〈ひまわり学生運動〉で国会はもっとオープンになるべきだと主張していた林昶佐(フレディ・リム)や賴品妤といった友人らは、今や立法委員になり、立法院長に政党を超えてオープンガバメントを推進するよう提言し、すべての政党の同意を得て、事を進めているのです」

こうして現在(2020年)、〈vTaiwan〉ではいよいよ最後の砦である「国会の透明化」が議題に上がっている。

(写真出所:すべて『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』より)

近藤 弥生子 ノンフィクションライター

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こんどう やえこ / Yaeko Kondo

2011年より台湾・台北在住。オードリー・タンからカルチャー界隈まで、生活者目線で取材し続ける。東京の出版社で雑誌編集を経たのち、駐在員との結婚をきっかけに台湾移住。現地デジタルマーケティング企業で勤務後、独立して日本語・繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を設立。台湾での妊娠出産、離婚・シングルマザーを経て、台湾人と再婚。著書に『オードリー・タンの思考』『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」』『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』『台湾はおばちゃんで回ってる⁈』がある。

ブログ:「心跳台灣」

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