台湾オードリー・タン「透明性」への驚異の信念 「討論プラットフォーム」の経緯から見えること
オードリーはこの〈UberX〉のプロジェクトについてこうも語っている。
「私たちはUber という会社についてではなく、自家用車に乗客を乗せる〈UberX〉の実務法について討論することで、摩擦を減らすことができました」
また〈vTaiwan〉の設計にはORID法というフレームワークや、全米屈指の名門校・コーネル大学〈Regulation Room〉のルール設定方法が取り入れられている。「1. 各部会は専属のアカウントから、責任を持って返信すること」「2. 返信に必要な時間を保証すること」「3. 参加者からチームを形成すること」「4. インターネット上で集めた意見を会議現場の議題にすること」といったものだ。
政府へ引き入れたのは、前政権の女性閣僚
この〈vTaiwan〉にオードリーが関わったことが、後に彼女が入閣する大きなきっかけになったと言える。〈vTaiwan〉をメインで進めたのは、馬政権時の女性閣僚・蔡玉玲(ジャクリーン・ツァイ)だった。
彼女は法律の専門家で、台湾の各地方裁判所で裁判官を務めた後、IBMで台湾や香港・中国エリアの法務長を歴任し、2013年に入閣した人物だ。
ジャクリーンはオードリーに声をかけ、〈vTaiwan〉設立プロジェクトの外部コンサルタントに起用したのだ。彼女は大臣として〈g0v〉主催のハッカソンに自ら参加し、政府ではなく、民間のプラットフォームとして〈vTaiwan〉を設立したいと発案。〈g0v〉の発起人である高嘉良にも協力を仰いだ。
ジャクリーンは、この会議の最後の発言者として「イノベーションの名のもとで税金を納めず、担うべき法律責任を取らないということがあってはならない。この会議では、タクシー協会の理事長がUber との協力体制を望むと発言があった。これを受け、私たちもイノベーティブな方法で、台湾の運輸サービスの品質を高めていきたい」と締め括った。
台湾政府はちょうど2014年から、35歳以下のソーシャル・イノベーターを各大臣のリバースメンター(若手が年長者に助言すること。逆メンターともいう)に登用する〈リバース・メンタリング制度〉を設けていた。
リバースメンターたちは大臣に新しい技術、方向性などを示す一方で、大臣は若い優秀な人材に政府の仕事を教え、政治への参画を促すという制度だ。私はてっきりジャクリーンはその制度を使ってオードリーを起用したのかと思っていたが、実際は違っていたとオードリーは言う。ここにも1つ、オードリーの姿勢がよく表れているエピソードがある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら