台湾オードリー・タン「透明性」への驚異の信念 「討論プラットフォーム」の経緯から見えること
私がこの2時間以上にわたる会議を見ていてまず驚いたのが、すべての利害関係者が一堂に会していることだった。Uber の台湾進出で大きな損失を受けることが懸念されていたタクシー会社最大手〈台湾大車隊〉も、社長含む3人で参加。当のUber 側も、台湾の社長とアジア担当のマネージャーの2名で飛行機に乗って海外から来台し、参加していた。
上の写真の、中央の人物が〈台湾大車隊〉社長の李瓊淑(リー・チュンシュー)。その右側が、Uber が台湾に進出した際の主要エリアである台北市のタクシー同業者の会理事長・王明雄(ワン・ミンション)。左側にはUber のエリアマネージャー、台湾の社長、顧問弁護士が並ぶ(肩書はすべて当時)。この席順の配置も、事前にオンラインで公開討論して決められたという。
こうした形で、国民からの声も参考にしながら現状が整理され、2016年10月25 日には交通部が〈汽車運輸業管理規則〉を改正。合法的なタクシー業者のみに営業を許可する多元化計程車方案(多様なタクシープラン)という形で、〈UberX〉は限定的ではあるものの、台湾で合法的にサービスを継続できることになり、プロジェクトは完了した。しかも、皆が口をそろえて「この会議に参加できることを感謝します」「皆で共通認識に至れることを心から期待します」と発言していた。声を荒らげる人はおらず、ユーモアある発言に笑い声さえ上がる、品位のある会議だった。
困難だったのは、「メンツの問題」
〈vTaiwan〉で最も解決が困難だったのは、発言者によっては、その他の人を代表して発言する資格があるのか? という、いわば「メンツの問題」だったとオードリーは語る。例えば、立法委員の発言には得票数分の意見を代表する価値があるのか?とか、何かしらの会の代表にはその会の参加者を代表した意見を出す資格があるのか?といったようなことだ。
「ただ、〈vTaiwan〉上で行われるべきは意見の決定ではなく『収集』ですから、この段階では意見の上下関係は必要ありません。代表が必要なのではなく、異なる立場や状況にある多面的な意見を見えるようにすることです。そうやって意見を探索した後に共同の価値を定義するので、解決法案の討論や予算・プランを通すといった伝統的な代議政治は、その段階から運用すればいいのです。彼らの仕事を奪うことにはなりません」
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