「再エネ電気を買いたい人」に届く驚きの仕掛け お金の送金と同じ理屈を使った電力取引の正体

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政府は、2018年に再生可能エネルギーで作った電気の場合、「非化石証書」が発行される仕組みを作った。再エネ発電所が固定価格買取制度を利用して送配電会社に売った電気の場合、費用負担調整機関が証書を発行し、小売電気事業者がオークションで証書を手に入れる。みんな電力のように、個々の発電所と契約を結び、特定卸供給により送配電会社を通じて電力を送ってもらっている場合、優先的に証書を得ることができる。

この非化石証書自体は、電源の種類や発電所の所在地、発電量などの情報を明らかにするものではない。政府は、RE100を念頭に、こうした情報の確認システムが必要として導入を急いでいる。

制度や情報が整備されていない

ところが、資源エネルギー庁作成の資料(2021年2月3日付)によると、こうした情報を開示・表示するには発電事業者の同意が必要で、実証事業が進められている現段階で「トラッキング付き証書」(こうした情報が開示・表示可能な証書)は全体の1~2%にとどまる。

内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」の4人の構成員は、「日本には、電源トラッキング制度や適切な電源表示、公開など、需要家が再生可能エネルギーを選択する際に不可欠な制度や情報が整備されていない」と苦言を呈している。

電源の種類や発電所の所在地、発電量などの情報を需要家が得られる仕組みづくりを含め、制度の再検討が行われているところだが、RE100のような国際的な流れに対応していくには、課題が多い。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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