弾圧下にある「中国のキリシタン」の仰天実態 純粋さゆえに悪い教えに対して脆弱な部分も

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なお余談ながら、1990年代以降の中国では、家庭教会のみならず三自委員会系も含めたプロテスタントの信者数の伸びが目立っている。これは天安門事件と中国民主化運動の敗北にショックを受けたエリート層が宗教や精神世界への傾倒を深めたことや、その後のインターネット時代のなかでネット布教によって信者の掘り起こしが進んだことも関係している。アメリカのピュー・リサーチセンターの推算によれば、2020年時点での中国のクリスチャンは約7241万人で、総人口の5.2%を占めるという。

社会において白眼視される教えを密かに守り続けている点で、中国の家庭教会の信者たちは、江戸時代の日本の隠れキリシタン(こちらはカトリックだが)を連想させる部分もある。ゼロ年代に中国東北部の吉林省で密かに布教活動に従事していた、プロテスタントの福音派系の日本人牧師・倉山(仮名)は、家庭教会についてこう話す。

老若男女を集めている大きな施設も

「家の教会(家庭教会)といっても、家族単位でほそぼそと信仰を維持しているケースだけとは限らない。表立って十字架を出していないだけで、老若男女を集めている大きな施設も結構あるんです。若い信者が多く、日本の教会よりも活気があるイメージすらある。北朝鮮のクリスチャンはまさに『隠れキリシタン』を連想させるものがありますが、中国の場合は『戦時中の日本のクリスチャン』くらいの位置付けだと感じます」

過去、中国の宗教政策が相対的に穏やかだった胡錦濤(こきんとう)政権時代(2003~2013年)には、多くの家庭教会の存在が黙認され、雑居ビルなどを借りてなかば公然と礼拝がおこなわれている時期さえあった。

ただ、家庭教会は中国の体制下において本質的に脱法的な存在であるため、天安門事件、法輪功の中南海包囲事件、習近平体制の成立――と、政治的な風向きがすこし変わるたびに厳しい摘発の対象となる。

地域の公安にとっての家庭教会は、他の「違法」施設である賭博場や性風俗店などと同じく、「上」に向けて点数稼ぎをおこないたいときにいつでも摘発パフォーマンスをおこなえる便利な存在でもある。

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