航空機をリサイクル、日本初のビジネスが離陸 静岡県の産廃会社が研究、2023年にも実現へ

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「退役軍用機などの評価について勉強を重ねていたが、その中で政府専用機の入札の話が入ってきた。新規ビジネスとして航空機の解体、リサイクルの研究を深めるため、2機を買い取った」(遠藤氏)という。買い取った2機は、コロナ禍が発生する前にアメリカ・ロサンゼルスの中古機ブローカーに転売した。

エコネコルの石井裕高専務(左)と遠藤洋仁事業開発部長(記者撮影)

2機を購入・売却する中で、アメリカの航空機関連会社から「なぜ、日本の航空機をわざわざアメリカまで運んで解体するのか?」と疑問を投げられた。「航空機のリサイクルマーケットがなぜ欧米にしか存在しないのか。素朴な疑問を持った」(同)のをきっかけに、航空機のリサイクル事業を日本国内で実現しようと模索を始めた。

「日本からアメリカに退役機材をフェリーフライト(回送)するだけで、エアラインの経費が数百万円かかる。(機体整備で頻繁に利用する中古部品を)海外から取り寄せるのも効率が悪い。国内で解体、部品リサイクルを完結させるメリットは大きい」(同)

旅客機はなぜ国内で解体できないのか

エコネコルでは、2020年8月からすでに7機を解体した。3月中にさらに5機を解体する予定だ。ただ、解体したのは、B777のような大型機ではなく、いずれもプライベートジェット機のような小型機か、国産の軍用機だ。

国産の軍用機は機密保持の問題もあり、海外で解体することはない。一方、ボーイングやエアバス社製の大型旅客機は日本国内で解体された事例がない。正確には事例がないというより、できないのだ。

1つは場所の問題だ。例えば、B777型機を解体するには、大型機が着陸できる2500㍍級の滑走路がなければならない。滑走路に隣接し、大型機を駐機できるスペースや解体スペースも必要だ。そして、最大の難関が制度上のハードルだ。

航空機リサイクルは、解体した機体から計器や補助動力装置(APU)、エンジンや車輪の部品を取り出し、販売するビジネスだ。ボーイング社製の航空機から取り外した部品を再利用するには、すべてアメリカ連邦航空局(FAA)による登録が義務づけられ、その後の流通経路が追跡できるようになっている。

ところが、この登録はアメリカの特定の事業者だけに許されていて、制度上、海外企業には認められていない。仮に日本国内で解体作業は可能でも、部品の再利用(リサイクル)が不可能なため、ビジネスとして成立しなかった。このため、これまで航空機を国内で解体・リサイクルする事業は「アンタッチャブル」(エアラインOB)となっていた。

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