AIが示す「コロナ後日本」の未来は「分散型」社会 「昭和的価値観」や行動様式の終焉と「世代交代」

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③「女性の活躍を中心に、働き方・生き方の分散型社会が進むと『都市・地方共存型』シナリオが実現しやすくなる」……「第1および第3の分岐」に関して

共働きや女性賃金の上昇、テレワーク、仕事と家庭の両立、男性の育児参加など「女性の活躍」が進むような環境整備を図っていくことが、東京と地方のいずれもが発展していく「都市・地方共存型」の実現にとって非常に重要な要因であることが示された。なぜそうなるのだろうか。

まず東京について見ると、日本のほかの地域に比べて東京では“働く女性の割合が高い”と思っている人が多いかもしれないが、それは誤解である。

実は意外なことに東京は相対的に「専業主婦率」の最も高い地域であり、しかも子育て環境が良好とは言えない(上記のように出生率も最低)という状況にある。他方、地方については、「女性の活躍の場が少ない」ことが東京圏などへの人口移動の理由の1つとなっているという状況がある。

したがってAI分析が示唆する上記のような方向は、こうした現状を是正し、東京と地方のWin-Winな関係を実現させるという意味を持っていると考えられる。

つまりそれは、「地方で活躍の場が少ないと感じる若年世代の女性が東京に出てきたものの、そこは仕事と子育てが両立できるような環境ではなく、結果的に日本全体の出生率も低下していく」といった事態を是正し、東京での子育て環境が改善していくと同時に、地方においても女性の活躍する場が増えていくということである。

「世代交代」とも重なるポストコロナ社会

以上、ポストコロナの日本社会について、私たちの研究グループが行ったAIを活用したシミュレーションとそこから示される展望について述べてきた。

すでに論じてきたように、そこで浮かび上がった基本的メッセージは、女性の活躍をはじめとして、“働き方・生き方を含む包括的な「分散型」社会”へ日本社会が転換していくことが、日本の未来にとっての中心的なカギとなるという点である。

興味深いことに、それは私たちの研究グループが“コロナ前”に行っていたAIシミュレーションが、「都市集中型社会から地方分散型社会へ」の転換の必要を示していた内容よりも、さらに進化した形での根本的な「分散型」社会を指し示すものだった。

そうした方向性自体は、すでに述べてきたように、「失われた〇〇年」を通じての積年の課題でもあったのであり、まさにコロナという“危機”を“チャンス”に転換していく対応が求められている。

希望を込めて言えば、本稿で「単一ゴール・集中型社会」と呼んだ、団塊世代などを含む“昭和”的価値観や行動様式からの移行は、すでに着実に起こりつつあると私自身は感じている。AI分析が示唆する包括的な「分散型」社会へのシフトは、日本社会の「世代交代」ともそのまま重なるのではないだろうか。

広井 良典 京都大学 人と社会の未来研究院教授

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ひろい よしのり / Yoshinori Hiroi

1961年岡山市生まれ。東京大学・同大学院修士課程修了後、厚生省勤務後、96年より千葉大学法経学部助教授、2003年より同教授。この間マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。2016年より京都大学教授。専攻は公共政策及び科学哲学。限りない拡大・成長の後に展望される「定常型社会=持続可能な福祉社会」を一貫して提唱するとともに、社会保障や環境、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア、死生観等をめぐる哲学的考察まで幅広い活動を行っている。著書に『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、大佛次郎論壇賞)、『日本の社会保障』(エコノミスト賞受賞、岩波新書)、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社)など。

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