AIが示す「コロナ後日本」の未来は「分散型」社会 「昭和的価値観」や行動様式の終焉と「世代交代」
2028年に、集中緩和・人口改善シナリオのうち、「地方分散徹底シナリオ」と「都市・地方共存シナリオ」との分岐が発生し、以降は両者が再び交わることはない。
東京と地方がともに繁栄し、「集中と分散のバランス」の観点からより望ましいと考えられる都市・地方共存シナリオへの分岐を実現するには、農業を含む地方における次世代の担い手の維持・育成支援に関する政策や、元気な高齢者を増やして東京圏の活気と自立性を維持する(高齢者が活躍する街づくり)政策が有効である。
都市・地方共存シナリオは、地方分散徹底シナリオに比べると相対的に優れているが、②で述べた分岐の後に、望ましくない方向に進む可能性がある。こうした分岐は2040年頃までに発生するが、望ましいシナリオへの分岐を実現するための要因を分析すると、女性の給与改善や共働き世帯の増加、仕事と家庭の両立、男性の育児休業取得率の上昇などが重要であることが示され、したがってこれらを通じて女性の活躍や「多様な働き方」を推し進める政策を継続的に実行する必要がある。
包括的な意味の「分散型」社会へ
以上がAIを活用した、2050年に向けたポストコロナの日本社会に関するシミュレーション結果の概要だが、私たちは、ここからどのようなメッセージを見いだすことができるだろうか。私自身の解釈を含め、以下考えてみたい。
全体としてまず大きいのは、いわば包括的な意味での「分散型」社会への転換という点だ。
ここで、包括的な意味での「分散型」社会とは、次のような趣旨である。
すなわち、先ほど紹介したコロナ前のAIシミュレーションが示していたような、東京一極集中の是正などに関わる「都市集中型」か「地方分散型」という意味での(空間的な)「分散型」にとどまらず、女性活躍やテレワークないしリモートワークの推進、企業のサテライトオフィスの展開、仕事と家庭の両立や男性の育児参加といった点など、働き方や住まい方、生き方の全体を含む包括的な「分散型」社会への移行が、ポストコロナにおける持続可能な日本社会の実現にとって何より重要であるという点である。
それは一言で言えば、「人生の分散型」社会と呼べるような社会のありようとも言える。つまり“昭和”に象徴されるような、人口や経済が拡大を続け、それと並行して「すべてが東京に向かって流れる」とともに、“集団で1本の道を登る”ように人々が単一のゴールを目指し、“男性はカイシャ人間となり、女性は専業主婦として家事に専念する”というモデルが強固になっていった、あらゆる面での「単一ゴール・集中型社会」からの根本的な転換をそれは意味するだろう。
本来ならばそうした転換は、物質的な豊かさが成熟し、人々の価値観も多様化し始めていた“平成”の時代になされるべきものだった。
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