AIが示す「コロナ後日本」の未来は「分散型」社会 「昭和的価値観」や行動様式の終焉と「世代交代」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

②「東京圏の元気高齢者が増えることが『都市・地方共存型シナリオ』の実現にとって重要な意味を持つ」……「第2の分岐」に関して

AIシミュレーションでは、元気な高齢者が増えて東京圏の活気と自立性が維持されるような政策(高齢者が活躍する街づくり)が、東京と地方の「都市・地方共存型シナリオ」を実現するためにやはり重要であることが示された。

これは何を意味しているのだろうか。実は、冒頭で少し触れたように、現在の東京ないし首都圏は急速に高齢化が進んでおり、大変な勢いで高齢者人口が増えている。例えば2010年から2040年の30年間で、東京都の65歳以上の高齢者は268万人から412万人へ144万人も増加するが、これは2020年の滋賀県全体の人口141万人あるいは岩手県全体の人口131万人を上回る規模である。

もちろんこの背景は、高度成長期に当時の若者が全国から東京などの大都市圏に流入し、彼らがいま高齢期を迎えているからである。

ということは、こうした大規模な高齢者層が75歳以上の後期高齢者あるいは80歳を超える年齢になっていくと、そこに巨大な「介護ニーズ」が発生することになる。東京圏ないし首都圏において“介護バブル”が生じるといっても過言ではない。

「都市・地方共存型」と高齢層の健康寿命改善の関係性

この場合、それに関する対応シナリオは差し当たり以下の2つだろう。

すなわち第1のシナリオは、そうした巨大な介護ニーズに対応して、全国の若い世代(多くは女性)が“吸い寄せられるように”東京圏に介護従事者として移り住み就職するというシナリオ。

第2のシナリオは、逆に東京圏の高齢層の一部が(故郷へのUターンないしIターンの形で)地方に移住するというシナリオである。もちろん、この2つのシナリオは単純な二者択一ではなく、実際には両者の組み合わせ、ないしグラデーションの問題だ。

この両シナリオについて、私は第1よりも第2のシナリオのほうが望ましいと考えている。なぜなら第1のシナリオだと、地方からますます若い世代を奪うことになり、地方の衰退を一層加速させることになるからだ。これは高度成長期に起こったことが、形を変えて再現されることにほかならない(拙著『人口減少社会のデザイン』参照)。

しかし一方、第2のシナリオの促進がどこまで実現可能かもまた未知数である。そうすると、いわば第3のシナリオとして考えられるのが、「東京圏で高齢者が急速に増えてはいくが、その多くは健康寿命などが延びて“元気”に歳をとっていき、したがって東京圏の介護ニーズに対応するために全国の若者が吸い寄せられるといった事態にはならない」という姿である。

先ほどのAIシミュレーションが示す「都市・地方共存型」という方向と、それに向かうにあたって東京圏の高齢者の健康寿命が改善していくことが重要な要因となるという結果が出ているのは、以上のような内容を示唆していると考えられるのである。

次ページ女性活躍が進む環境整備がカギに
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事