フジ株主が突きつけた「日枝体制」への疑義 テレビ業界"一人負け"の元凶は経営陣の高齢化?

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今年の株主総会でも、日枝氏が議長席から“にらみ”を利かせていた

経営体制を刷新して50代の亀山氏を社長に据えたが、今のところ、その効果はほとんど見えてこない。その理由について、共同提案した個人株主の1人である松沢弘氏(元・日本工業新聞<現フジサンケイビジネスアイ>記者)はこう指摘する。

「フジのような長老支配では、現場の若手はやりにくくて仕方がないだろう。亀山社長や常務の大多亮氏らは、日枝会長の“にらみ”から解放されれば、のびのびと力を発揮できるのではないか。もちろん、優れた経営手腕があればの話だが」

株主との質疑応答でも、日枝会長に関する質問が出た。日枝会長と安倍晋三首相は食事やゴルフで頻繁に会っていると週刊誌などで数多く報道されているが、権力機関を監視すべきメディアのトップとして問題ではないか、というものだ。

これに対し、フジ・メディアHDの太田英昭社長は「日枝会長は政界の多くの人と情報交換しており、安倍首相もその中の1人」と回答した。株主の指摘のとおり、首相と日枝会長が親しい間柄だとすると、在京キー局の中でアベノミクスによる景気回復の恩恵を享受できないのがフジだけ、というのも皮肉である。

バイキングは「長い目で見て」

ほかには、フジ・メディアHDが三井不動産や鹿島建設などとともにお台場への誘致を進めている、カジノ構想に関する質問もあった。国会に議員立法で提出されたIR(統合型リゾート)法案は委員会審議に入り、秋の臨時国会での継続審議が決まっている。

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今年の株主総会は2時間40分で終了した

質問した株主は「業績の悪いフジ・メディアHDでも株価が極端に落ちないのは、お台場カジノ構想への漠然とした期待感ではないか」と指摘した。会社側は「特区準備室」を「特区事業室」に格上げして力を入れていることを認めたが、具体的な動きについては言及しなかった。

また、「笑っていいとも!」の後継番組「バイキング」の視聴率が低迷していることについて質問が出た。フジテレビの亀山社長は「『いいとも』も最初は視聴率2%だったので、新番組も長い目で見てほしい」と答えるにとどめた。

会場に来ていた株主からの質問は全部で16問。総会は12時40分に終了し、退場者もなく、大きな波乱もなかった。

横山 渉 ジャーナリスト

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1965年宮城県生まれ。東洋大学社会学部応用社会学科卒。産経新聞社、日刊工業新聞社を経てキャリア情報誌の編集に携わり、その後フリーランスとなる。企業取材を得意とし、政治・経済から環境・健康まで取材テーマは幅広い。著書に『週末1時間でできる仕事改善術』『コンサルタント 独立開業ガイド』『ニッポンの暴言』。

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