なぜアマゾンは、スマホに参入したのか? アマゾンのスマホ戦略を分析する

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しかし、例えば将来的に世界規模の決済サービスに乗り出すとした場合、アップルの優位性は言うまでもない。8億件のカード番号を押さえていたとしても、参入をためらわせるのが決済サービス、ではあるが。

アップルにとっても、Fire Phoneとプライムサービスが連携していく姿は、あまり気分の良いものではないだろう。

iTunesで1曲単位で音楽を購入できるようにした功績は大きかった。しかし音楽を購入する、という行為は完全にダウントレンドの中にある。人々は、音楽ストリーミングサービスへと流れているのだ。アップルもiTunes Radioを昨年スタートさせ、既にスポティファイを追い越すシェアを既に獲得したが、めざましい成功とまでは言えない。ビーツ買収によって風向きが変わるかどうか注視すべきだ。

目指すライフスタイルは見えるか?

アマゾンのハードウェアを見ていて、いつも筆者が感じることは、本気でやっていて今回のFire Phoneも含めて良い製品を世に送り出しているが、ビジネスモデルの源泉は必ずしもハードウェアにあるわけではない、ということだ。

Kindleの時もそう感じたのだが、「まだ世の中に電子書籍リーダーやタブレット、スマートフォンといった、電子書籍を便利に読める端末がないからKindleをつくった」と見えるのだ。

Kindle Fireシリーズ、Fire TV、Fire Phoneも、Kindleと同様に、アマゾンが目指す新しいビジネスの形を作り上げる『過渡期』的なアイテムだとすると、アマゾンは物販からデジタルへ、所有から所有権管理へ、というモデルへと移行しようとしているのだろうか。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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