なぜアマゾンは、スマホに参入したのか? アマゾンのスマホ戦略を分析する

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生活を楽しくする機能と、Amazon.com

Fire Phoneは4.7インチHDディスプレイとクアッドコア2.2GHz駆動のプロセッサ、1300万画素カメラという内容で、2014年にリリースされるハイスペックスマートフォンとして充分な素質がある。しかし、こうしたスペックのアピールはウェブサイトでも後ろに追いやられ、前面に出しているのが「Dinamic Perspective」と「Firefly Technology」と呼ばれる機能だ。

Dinamic Perspectiveは、スマートフォンをタップしなくても片手で簡単に使いこなせるようになりそうだ。端末のディスプレイ側には超低電力のカメラが四隅に1つずつ内蔵されており、このカメラを毎秒60フレームで画像検知しながら、端末の動きを正確に認識する。これにより、例えば端末を左右にロールさせてメニューを表示させたり、縦に長いウェブページを送るときに前後に軽く傾けるように振る、といったジェスチャーでの操作を実現している。

Firefly Technologyはアマゾンらしい機能だ。例えばカメラで雑誌のページを撮影したとき、電話番号やURL、メールアドレスなどを画像の中から自動的に認識して、アクセスできるようにしてくれる。これはスマートフォンを実空間のスキャナのような役割で利用でき、非常に便利な機能になりそうだ。

また、カメラで書籍やDVDの表紙を撮影すれば、すぐにアマゾンのウェブページでレビューを呼んだり購入したりできるようになる。カメラだけでなく、テレビや映画、音楽などをFire Phoneに聞かせることで、コンテンツを判断してくれる。

アマゾンの巨大なストア機能との連携は、他のスマートフォンにはない魅力になりそうだ。

プライムユーザーのエンゲージメントを高めるスマホ

筆者は米国で、アマゾンプライムというサービスに入っている。先頃値上げされ年間99ドルになったが、遅く不確実な割に高くて馬鹿にならない送料が無料になるため、年に10回以上買い物をするのであれば、プライムに入った方が割安になり、比較的早く届く便を利用できるようになる。

アマゾンは、Fire Phone購入ユーザーに、期間限定とはいえ、プライムの1年分の利用権を付けた。AT&T契約であれば199ドルでスマートフォンが購入できるが、プライムの分を差し引くと端末は100ドル分になる。アンドロイドを使っていたり、買い換えを検討しているユーザーで、アマゾンプライムに入っていたりする場合は、非常に魅力的な選択肢と言えるだろう。

またアマゾンはFire Phoneユーザーに、写真やバックアップを行えるクラウドサービスを無制限に解放した。アップルやグーグルが写真を保存するためにクラウドストレージ容量を値下げしているが、より魅力的な訴求になるだろう。

アマゾンは送料だけでも十分メリットを見いだせるプライムユーザー向けに、ビデオストリーミングサービス「Instant Video」と、つい最近サービスをスタートさせた音楽ストリーミングサービス「Prime Music」も、追加料金なしで利用する事ができる。

プライムユーザーにとってFire Phoneは、何も考えずに便利で快適に使うことができる点で、非常に良い選択だ。同時に、プライムユーザーではない人がFire Phoneをきっかけにプライムサービスを1年試すことで、次の1年も更新すれば、99ドルの更新料をアマゾンに支払ってくれるかもしれない。

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