奥歯がない人ほど「太りやすくなる」科学的根拠 歯磨きで「出血が止まらない人」ほど要注意
とくに注意が必要なのは内臓脂肪型肥満、いわゆるメタボ(メタボリック・シンドローム)です。メタボは、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、心血管疾患などの生活習慣病をはじめとする、さまざまな疾患の原因となることがわかっています。
そして、メタボの人は歯周病になっていることが多く、また、歯周病の人はメタボになりやすいことも明らかになっています。メタボと歯周病の関係は、1998年に日本で初めて発表されました。
メタボになると、なぜ歯周病になりやすいのでしょうか? メタボの原因となる肥満は、それ自体が慢性的な炎症です。内臓脂肪の細胞から炎症(腫れ)を起こしたときと同じ物質(炎症性サイトカイン)や活性酸素が出され、血液の中に入っていきます。それらが歯ぐきの組織に巡ってくると、歯ぐきの炎症を誘発し、歯周病を引き起こします。
歯周病になって奥歯がグラついたり、奥歯を失ったりすると、堅いものが噛みづらくなり、ご飯などの炭水化物や脂質の多い食事を多く摂るようになります。加えて、噛み合わせが悪いために、あまりよく噛まずに飲み込む。そのために早食いになり、その結果、肥満になったり、肥満が進んだりするのです。
そんなメタボと歯周病の悪循環に陥らないためにも、肥満には十分に気をつけなくてはなりません。肥満度の目安には、国際的な指標BMIが用いられます。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値です。
たとえば、身長が160cm、体重が60kgの人ならば、
で、BMIは約23になります。日本肥満学会ではBMIが25以上を肥満としています。30以上の人は、歯周病になるリスクが8.6倍も高まることがわかっています。
歯磨きで「出血が止まらない人」ほど要注意
いまでも私がよく覚えている患者さんがいます。あるとき、私の診療室に、「歯磨きをすると歯ぐきから出血しはじめ、血が止まらなくなる」という患者さんが来られました。
診察すると、歯と歯ぐきの境目から出血があり、明らかに歯周病でした。
「歯ぐきが弱って歯周病になっていますね。それで出血しやすくなっているんです」
私はその場で歯ブラシで、患者さんの歯と歯ぐきをブラッシングしました。しばらくブラッシングを続けていると、出血は止まりました。そして、こうアドバイスをしました。
「糖尿病とか、ほかのご病気がある可能性があります。一度内科を受診することをおすすめします」
すると、次の診察時に、その患者さんに丁重にお礼をいわれました。
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