熱狂なき「日経平均3万円」で警戒すべきこと コロナ収束期待だけでは説明できない高値の背景
その瞬間は呆気なく訪れた。2月15日、日経平均株価は約30年ぶりとなる3万円台に到達した。だが、市場の受け止めは熱狂に程遠かった。
新型コロナウイルスの感染拡大で、日経平均は2020年3月に1万6358円まで下落した。その後、金融緩和と財政拡大により水準を回復。米国大統領選挙後から上昇ピッチを拡大した。今年に入るとコロナのワクチン接種が始まり、世界的な景況感の改善期待が高まった。日経平均は2月に入り一気に3万円の大台に乗せた。当日の東証1部の売買代金は2.6兆円と市場に高揚感は見られなかったが、バブル期の1990年以来の水準に、過熱感を指摘する声も出た。利益確定売りもあり、19日には一時3万円を割り込んだ。
東証1部全体のPER(株価収益率)は22.8倍(1月末)で、数年前までの10倍台より大幅に上昇している。PBR(株価純資産倍率)も過去の上限である1.3倍で、理論上の上値余地は小さい。実際、「株安」を見込む投資家は増えている。日経平均が1%下落すると、逆に2%値上がりするように設計されたETF(上場投資信託)である「日経ダブルインバース」の残高が、初の6億口に乗せている。
「売らない買い手」が下支え
その割に株価が大きく下落しないのは、日本銀行のETF買いと、企業の自社株買いの存在が大きい。日経平均が3万円を超えてから、日銀のETF買いは行われていないが、相場の急落時には必ずといっていいほど買いが入ってきた。
企業の自社株買いも高水準が続いている。消却すれば発行済み株式数を減らせるため、EPS(1株当たり利益)を向上させROE(自己資本利益率)を押し上げる効果がある。高いROEは優良企業の証しであり、配当と並ぶ株主還元として投資家にも歓迎される。
日銀がいきなり売り攻勢に転じたり、企業が自社株買いをやめたりすることはまずあり得ない。大口の「売らない買い手」が株価の下支えになっているのだ。
では、今後の株価動向をどう見通せばよいか。
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