トヨタ、コロナ禍でも「営業益2兆円」の底力 電気自動車の本格展開はいよいよ不可避に

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コロナ禍で企業体質の強化も進んだ。2020年春、トヨタの日本や欧米の主要工場が稼働を休止した際、生産現場ではムダを減らす「カイゼン(改善)」や原価低減の活動を強化。その結果、「2020年後半に稼働が戻ってきたときに固定費がリーンな(小さい)状態で高稼働を続けられた」(近執行役員)ことも高収益につながった。

トヨタの足元の損益分岐台数(収支が均衡する連結販売台数)は年間約560万台。大幅な営業赤字に陥ったリーマンショック時より200万台以上下がったが、手を緩めない。「固定費の棚卸しをさらに進めて、500万台を目指す」(トヨタ幹部)。

2020年末から顕在化したリスクが半導体不足だ。品薄は今夏まで続くとの見方もある。ホンダやスバルなどが大規模な減産を強いられる一方、トヨタは大幅な減産には至らないとする。

東日本大震災を機にBCPを強化

自動車各社は2011年の東日本大震災時に半導体の供給不足に見舞われ、トヨタはそれを契機にBCP(事業継続計画)を強化。10次下請けまで把握できる取引先データベースを整備した。

普段から取引先の部品在庫量を把握し、最長3年先までの生産計画を示す。今回は1~4カ月分の半導体在庫を確保していたことが功を奏した。「サプライチェーンのマネジメントの差が出た」(トヨタ幹部)。

主要市場で販売が好調な上、半導体不足の影響が軽微にとどまる見通しから、トヨタは2021年に過去最多となる920万台程度の車両生産を計画する。2020年と比べて約2割増で、これまでの最多だった2019年の905万台を上回る。

今後の焦点は、将来の電動車の主役とされる電気自動車(EV)の展開だ。欧州や中国に続き、アメリカでもガソリン車から電動車への転換が進む。トヨタが強みとするハイブリッド車(HV)は充電インフラが不要なうえ、燃費改善効果が高く、電動化の「当面の現実解」になる。トヨタは2020年に、200万台近いHVを販売し、電動車市場で首位を走る。

ただ、全米の環境規制をリードするカリフォルニア州やイギリスはHVの販売も2035年までに禁止する方針を表明しており、中長期的にEV展開は必須だ。トヨタのEV販売は2020年で約3300台。年内にアメリカでEV2車種を投入するなどして品ぞろえを拡充し、2025年にはEVと燃料電池車で100万台以上の販売を目指す。

世界新車販売に占めるEVの割合は3%に過ぎず、戦いは始まったばかり。だが、EV専業のアメリカのテスラは2020年に約50万台を販売し、通期初の黒字化を達成。アメリカのアップルがEV参入を模索するなど、地殻変動の予兆も見える。トヨタはEV市場でも存在感を示せるか。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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