宇野重規「執行権を民主的にどう統制できるか」 立憲主義だけでは日本政治はよくならない

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――最近、若い官僚の退職者が増加していることが問題になっています。官邸の力が強まる一方で、官僚の力が弱くなっているということはないでしょうか。

そこが難しいところですよね。中学や高校の教科書では、官主導社会は批判的に書かれています。いわく、日本は官僚の力が強すぎたために、国民の政治参加が妨害されているのだと。

ただ、これはなかなか微妙な問題です。例えば、日本の官僚の人数って、国際比較すると圧倒的に少ないんですね。ずいぶん少ない人数でよく働いているとも言える。その官僚に対して大変風当たりが強いまま、現在に至っているわけですね。

でも、本当にそれでいいのか。いま言われたように、若く意欲的な官僚が逃げ出しつつあるのは大きな問題です。だから私はむしろ、官僚を正当に評価するほうがいいと思っているんです。

現代の官僚は萎縮しすぎている

おしなべて私が知っている30代、40代ぐらいの官僚の皆さんって、とても真面目ですよ。誠実で、労働時間が長くても文句を言わずに一生懸命やっている。自分たちが国を引っ張っていこうというメンタリティーはなくなっても、自分たちの職務を誠実にこなしていくことには強い関心を持っている。それは基本的に正しい方向だと思います。

でもそれが行きすぎて、萎縮するようになってはまずい。現場の感覚からいったら、若手、中堅の官僚が自由に発言できる組織のほうが、絶対にいいアイデアが出てくると思うんです。もちろん、官僚がいくらアイデアを出したからと言って、すぐには実現しないでしょう。大事なのは、それを大臣だけに説明するんじゃなくて、市民にも届けることです。行政のプロとして、専門家として、自分たちはこういうアイデアがある。市民にも協力してもらえないか。こういったことをもうちょっと自由に、いろんな場に出てきて話せるといいのですが。

――政治家に比べて、専門性もありますからね。

すぐれた情報も持っているし、経験も蓄積されています。そういう専門家の意見をもっと民主的に活用するべきです。でも現実には、キャリア官僚もみんな萎縮してしまって、大臣の意向に沿うことばかりを気にしている。それはすごくもったいないことです。

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