宇野重規「執行権を民主的にどう統制できるか」 立憲主義だけでは日本政治はよくならない

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宇野重規(うの・しげき)/1967年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。現在、東京大学社会科学研究所教授。専攻は政治思想史、政治哲学。主な著書に『政治哲学へ 現代フランスとの対話』(2004年渋沢・クローデル賞LVJ特別賞受賞)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社学術文庫、2007年サントリー学芸賞受賞)などがある(撮影:尾形文繁)

――いまのお話と関連することですが、『民主主義とは何か』では、近代の民主主義論は議会制を中心に議論してきたために、執行権や行政権の問題が死角になっていたことが指摘されています。

そこは本で強調したかった論点の1つです。近代の民主主義論は、立法権に議論が集中しているんですね。今まで権力者が恣意的な意志ででたらめな法律をつくってきたからよくなかった。それを変えて、全人民の1つの共通の意志を体現するような正しい一般法をつくれば、世の中は自動的にうまくいくだろうと。これがルソーの発想であり、それをどの国よりも真に受けたのがフランスなんです。

でも、その結果といえば、せっかく革命をしたのに、ナポレオンのようなカリスマ的な指導者が人民の声を体現しているとの名の下、何度も出てくる。ナポレオン3世、20世紀のド・ゴールしかりです。フランスは民主政が大混乱に陥ると、最後はカリスマ的指導者の力で乗り切る、それを通じて執行権が拡大するというパターンを繰り返しているんですね。

これは現代でも大きな問題になっていることです。フランスの政治学者ピエール・ロザンヴァロンは、近現代を通じて、執行権の力は拡大する一方で、現在は「民主主義の大統領化」が進んでいるといいます。

アメリカのトランプ前大統領はその典型だし、日本を見てもそうでしょう。官邸主導という名のもとで、さまざまな問題が頭ごなしに決められてしまっています。

どのようにブレーキをかければいいか

―執行権が暴走するような場合、どのようにブレーキをかければいいんでしょうか。

はっきり言って、まだ十分に研究されていないと思います。これまで多くの政治学者が「それは代表制民主主義がうまく機能していないのだから、選挙制度を変えよう」という処方箋を出してきました。1993年以降の日本の政治学者はその典型です。選挙制度を変えることこそが、政治をよくするカギだと考えたのです。

結果、どうだったか。選挙制度をいくら変えても、政治はよくならないのではないか。多くの人がそう思うようになってしまいました。むしろ執行権がオールマイティーの力を持ち、誰にもチェックされないまま暴走するようになってしまったのではないでしょうか。

もちろん現在の選挙制度に問題があるのもたしかです。比例代表制と小選挙区制の長所がくっつくと思って制度改革をしたら、むしろそれぞれの悪いほうが目立つようになってしまった。これを変えていくという議論も当然すべきでしょう。

けれども、それだけがベストな処方箋ではない。執行権を民主的にチェックし、直接的に統制する仕組みをつくる。それが現在の民主主義をバージョンアップさせるうえで、死活的に重要な課題だと思います。

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