新型ノート「初期受注2万台」が微妙である訳 高価格帯にシフトした日産の戦略は成功なのか

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200万円からという価格はコンパクトカーとしては少々高く、従来あった“安価なコンパクトカーが欲しい”というニーズに新型ノートは応えられなくなった。

先代モデルでは「e-POWER」の比率が6割であったというが、逆にいえば購入者の4割が“安価なエンジン車”を選んでいた、ということだ。新型になって、そうした“安価なコンパクトカー”を求める層に届かなくなったことが、販売台数に表れたのだ。

一方で、ライバルであるヤリスやフィットには、従来通り100万円台のエンジン車が用意されている。安価なエンジン車の存在の有無が、販売台数に影響を与えたのは間違いない。

ノートよりも小さく安価な「マーチ」の販売台数が増えたことが、それを裏付ける。2021年1月のマーチの販売台数は、前年比115.9%と増加しているのだ。

「マーチ」は1.2リッターガソリンエンジンを搭載。価格は128万9200円~(写真:日産自動車)

現行マーチのデビューは2010年のこと。誕生10年を超えるモデルが前年比プラスとなるほど売れるのは、普通ではありえない。ノートの価格帯の変化が、マーチの販売上昇の理由と考えるのが妥当だろう。

“低価格帯グレードの切り捨て”は既定路線

しかし、この結果は日産にとっては想定済みのはず。いや、逆に狙い通りだったのではないだろうか。なぜなら、日産は現在、「NISSAN NEXT」と呼ぶ事業構造改革計画のまっただ中。この計画は「最適化」と「選択と集中」をテーマにし、具体的には「数を追わない」「1台当たりの販売価格を上昇させる」、つまり利益を重視する方針だ。

そういう意味で、新型ノートの低価格帯グレードの切り捨ては、まさに「NISSAN NEXT」に則ったもの。そして、販売の内容も、最上級グレードとなるX(218万6800円)が84.2%を占めている。

さらに、オプションとなるLEDヘッドランプやアラウンドビューモニターの装着率は約7割にもなるという。

LEDヘッドランプはLEDフォグランプなどとセットで9万9000 円のオプション(写真:日産自動車)

さらにNissanConnectナビゲーションシステムやプロパイロットなども装着してフル装備にすると、車両価格は270万円を超える。当然、1台当たりの販売価格は旧型よりも高い。

これは数を追わずに利益を重視するという方針にも合致する。そうした日産全体の方針に沿ったうえで、目標の2.5倍の初期受注は、それほど悪いものではないといえる。こうした、狙い通りのスタートを切ることができた理由は、やはり商品力の高さがあったからだろう。

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