成毛眞の「キャリアデザイン論」 ニッポンのジレンマ 古市憲寿×成毛眞 対談(2)

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ゼロから、経験のない人間だけで作っていくことが面白い

古市:小規模な組織であっても、なかなか自分で仕事を動かしていくようになるのは、難しいのかなとも思います。結局、小さい組織でも雇われ気分で働いてしまう人も多いと思うのですけど、なぜ大学を出て、すぐに就職した企業で自分の意志で働けたのか、という話を伺っていてすごい不思議で。

成毛:少なくともマイクロソフト時代っていうのは、上司も仲間も部下もほとんど同い年なんですよ。ビル・ゲイツが1955年生まれで僕も55年生まれで、ジョブスも55年生まれだし、とにかく55年生まれのコンピュータ関係者っていうのは非常に多い。

ちょっと若い、孫さんとか西さんとかもいるんですけどね。当時、おそらく、彼らも「わかって」いないんです、20歳そこそこですから。これが仕事だとか、これが会社だとかいう定義を、彼らが持っていないんです。僕ももちろん持っていなくて。

なので、「型にはまらないことをしよう」という言葉すらないのです。何が型なのかもわからないわけですから。そういうわけで、作り上げていく会社そのものを、ゼロから経験のない連中で作り上げていくってことが、いかに面白いかということですよね。

逆に言うと、今、大学生たちがベンチャー企業に入社をしようというのが、ひとつの風潮としてあるじゃないですか。「大企業なんかじゃなくて、ベンチャーでしょ」っていう。それをやるくらいなら、ベンチャーを一から立ち上げたほうがいいと思います。

古市:それはなぜですか?

成毛:形も決まってないし、自分たちで形をつくることもできないからですね。逆に大企業の場合はむしろ形がカッチリ決まっているので、意外と大企業のオジサンたちは、これ、若いのを入れて何とかしようよって思っているんですよ。

古市:変えたがっているんですね、大企業も。

成毛:意外と腕の振るいようがあるのです。今度の大卒で入ったやついいねーなんて話になって、じゃあちょっと大きな仕事をアイツにやらしてみようよ、それでいいプラクティスになったらまねしよう、という見方をしているんですよ。オジサンたち馬鹿じゃないですからね。そういう意味じゃ大企業は、なかなか入りづらいとはいえ、チョイスのひとつではありますよね。

古市:大企業だからこそ、ベンチャー的に企業の中で働けるということですね。

成毛:そうですね。大企業はむしろ小さな組織が寄り集まってできていたりしますから、総合商社だと鉄を作っているチームは10人とか、アパレルのあるブランドは10人とか、つまり10人単位くらいの小さな会社が500組くらい集まっているっていうイメージですよね。

それは、メーカーでも同じことだと思います。自動車メーカーでもエンジン作っているところと、ボディー作っているところと、宣伝しているところでバラバラです。小さいところが集まっているところですから、意外と大会社もベンチャーっぽい側面があるんです。あくまで「部によっては」ですけど。もちろん、部長さんがガチガチの大企業人、というところもあるんで、運もありますね。

古市:そのダメな上司がいた場合って、どうしたらいいんですか? あきらめるんですかね。

成毛:必ず人事異動はあるので、あきらめる。でも人事異動がない会社に入っちゃったら辞めるしかないですね。

古市 憲寿
ふるいち のりとし

1985年生まれ。2010年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。慶応義塾大学SFC研究所上席所員。『絶望の国の幸福な若者たち』ほか著書や雑誌連載多数。数々の政府の推進会議や委員会委員、テレビ番組のコメンテーターを務める。

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