先進国「ワクチン独り占め」で実は損する構造

経済への影響はブーメランのように跳ね返る

多くの国で新型コロナウイルス向けのワクチン接種が始まっているが、裕福な国がワクチンを独り占めするのは望ましくない(写真:Andrew Testa/The New York Times)

裕福な国々による新型コロナワクチンの独り占めで懸念されるのは、人道上の大惨事だけではない。結果的に経済が大打撃となり、富裕国にも途上国とほぼ同様のダメージが広がる──。

これは最新の学術研究で明らかとなった重要なポイントだ。最も極端なシナリオ、つまり豊かな国々が今年半ばまでに国民へのワクチン接種を完了する一方、貧しい国々でほとんど接種が進まなければ、世界経済が被る損失は9兆ドル(約940兆円)を上回ると研究は試算する。これは日本とドイツの国内総生産(GDP)を足し上げた金額よりも大きい。

しかも、その損失の半分近くはアメリカ、カナダ、イギリスといった富裕国が背負うことになるのだ。

損失の半分は富裕国に

研究では、途上国では今年の終わりまでに人口の半分のワクチン接種が終わるシナリオが最も可能性が高いとされたが、このシナリオでも世界経済には1.8兆〜3.8兆ドルの損失が生じ、その半分以上を富裕国が被ることになる。

国際商業会議所からの委託で行われた同研究の結論はこうだ。すべての国に公平にワクチンを配布することが、すべての国の経済的利益にかなう。中でも貿易依存度の高い国にとっては、そうすることが一段と自らの利益となる──。

ワクチンを貧しい国々に分け与えるのは慈善行為に過ぎない、という広く流布した考え方の迷妄を打ち砕く結論といえる。

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