元製薬会社MRが造る「金賞受賞ワイン」の本質 北海道仁木町ワイナリー「NIKI Hills」の造り手
日本ワインブームと言われて久しい。いや、もうブームではなく、フランスやイタリアと同じように「日本」もワイン産地として定着したといえる。
実際、ワイナリー数は2008年の196から2018年には395と急増、今年末には500に達しそうだ。ワインツーリズムというワイナリー訪問を核にした大人の旅も一般化した。ワインジャーナリストとして長年取材してきた私からすると、現在の状況には隔世の感がある。
新規ワイナリーの大半が、「ブドウを育て自分のワインを造りたい」といった個人が始めた小規模なものだ。それがここ数年、資本力のある企業のワイン産業参入が始まっている。これも日本ワインが定着した証しと言えるだろう。
今回は、その先駆けとなったワイナリーを紹介しよう。広告業を柱とするDACグループが2016年、北海道の仁木町に創業した同町初のワイナリー「NIKI Hills(ニキヒルズ)ワイナリー」だ。
余市に出遅れた仁木のワイナリーの出発点
隣の余市町は、すでに13のワイナリーがあり日本ワインブームの台風の目のような町だ。ともに北のフルーツ王国と呼ばれ栽培環境にそれほど差がないのに仁木町は一歩出遅れた感がある。DACは、仁木の旭台の丘に農業の再生、地域活性化を掲げ、自然に親しみ宿泊もできるワインを核とした複合型ワイナリー「ニキヒルズ」を起こした。ブドウ畑から背後の森まで、総面積28haに及ぶ。
目玉の一つが広大なガーデン。NHK「趣味の園芸」の講師もつとめる福森久雄をヘッドガーデナーに迎え「積雪期を除けば何かしら花が咲いている」というナチュラル・ガーデンを作り上げた。
ワイナリー背後の森は環境保護活動家として知られ昨年亡くなられた故C.W.ニコルをアドバイザーに迎え、ヒーリングの場として整備した。2019年には洞爺湖のウインザーホテルなどで腕を振るったシェフを迎え、レストランと宿泊施設とをオープンした。
肝心のワイナリーでは、キャリアのある醸造家をコンサルタントに迎え、製薬会社のMR(医薬情報担当者)から転身した麿直之さんに経験を積ませながら醸造家に育てる計画だった。「仕事はできるだけ楽に給料を稼ぐ手段、夢は仕事外で探す」としていた麿さんだったが、交流のあったDACの石川和則代表からニキヒルズの立ち上げに誘われ「ビジネスを一から立ち上げられ、ワイン造りも任せてもらえる、夢と仕事が一つになる」と、ニキヒルズに加わった。
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