そして、瀬戸線は勝川―枇杷島間の東海交通事業城北線のルーツでもある。愛知環状鉄道線は通勤通学路線として存在感を増しているが、城北線はいまひとつ。名古屋という大都市近縁を通り、全線にわたって高架・複線という立派な施設を持つが、肝心の車両が非電化のディーゼルカー。列車本数も日中は1時間に1本と極めて少なく、つまりは都市部を走るローカル線。このあたり、自動車産業が盛んで圧倒的な“クルマ社会”の愛知県ならではといっていい。
クルマ社会の中で鉄道が生き延びるとなると、あの手この手を繰り出していくしかない。高架複線非電化という城北線もそうだし、磁気浮上式のリニモもその一例。さらに大曽根から小幡緑地までを結ぶ「ガイドウェイバス」という特殊な乗り物もそうした事例の1つだ。この乗り物、一見するとバスである。
いや、一見すると、どころか本格的にバスである。実際に小幡緑地から先はどこにでもあるような路線バスとして一般道を走っている。しかし、大曽根―小幡緑地間は違う。高架の専用施設の上を路面上に設けられたガイドに沿って走る新交通システムだ。
車両はガイドに従って走るので運転手はハンドル操作をする必要がないという。法律的には軌道法に準拠しており、つまりは鉄道の仲間だ。小幡緑地からはそのまま一般道に出て路線バスになるから、鉄道とバスのいいとこ取りをした乗り物とでも言うべきか。路線バス区間と合わせて「ゆとりーとライン」と呼ばれている。
SLが走った新興路線
このあたりで名古屋駅に戻ろう。東海道新幹線がひっきりなしに発着する名古屋駅からは、これまた個性あふれる路線が出ている。臨海部へ向かう第三セクター路線、名古屋臨海高速鉄道あおなみ線だ。2004年開業、ポートメッセなごや、リニア・鉄道館、レゴランドなどへのアクセス路線であり、途中にある名古屋貨物ターミナルまでは貨物列車も走っている。
歴史的には東海道線貨物支線の西名古屋港線がルーツで、さらに2013年には河村たかし名古屋市長の肝いりで蒸気機関車の実験運行も行われている。都市部の新興路線でSLとは違和感たっぷり。河村市長はあおなみ線で定期的にSLを走らせて観光の目玉にしようと考えていたようだ。だが、そもそも都市部ではSLの煙や騒音は沿線住民にとって厄介者。そのほかさまざまな難題があって実験運行以来SLは走っていない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら