アフターコロナの中国で「日本車が好調」の訳 24.1%のシェアを獲得した日系メーカーの戦略

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さらに4つ目の要因として、中古車も評価されていることがある。

設計の現地化に加え、競合ブランドと比べて中古車として売る際の価格が下がりにくい(リセールバリューが高い)ことも支持された。

中国汽車流通協会による、2020年末時点での車齢3年の平均残価率を見てみると、フォルクスワーゲンが62%であるのに対し、トヨタとホンダは75%を超えている。特にレクサスは85%で、メルセデス・ベンツ(69%)やBMW(61%)との差が開いた。

セダン市場も日系メーカーが好調だが……

日産「シルフィ」とトヨタ「カローラ」は、欧米系ブランド車一色であったセダン市場で、それぞれ販売台数1位と3位に躍進。ホンダ「CR-V」は、15万元(約250万円)以上のSUV市場で1位となった。

2020年は、これら3車種が、それぞれの現地法人である東風日産全体の45%、一汽トヨタの45%、東風ホンダの30%を占めている。

同名の日本販売モデルとは異なる日産「シルフィ」(筆者撮影)

こうした「スター車種」を作り出したことにより、ブランド力の向上や生産のスケールメリットの拡大などの波及効果を生み出し、日本車シェアは24.1%に到達。直近10年間で最も高い実績を示した。

中国では日本車ファンが増える環境が整い、同時に日系企業が価格競争力を意識しながら、兄弟車戦略でセダン、SUV両市場で同時躍進したことで、地域ごとに消費者層の拡大を果たした。

しかし、日産はシルフィというスター車種を登場させながらも、低価格帯の中国専用ブランド「ヴェヌーシア」などが苦戦することにより、2年連続のマイナス成長となっている。投入車種が少ないマツダと三菱自動車も、それぞれ5.8%減、43.6%減だ。

変調をきたす中国の自動車市場では、各社が懸命に生産台数の維持と新規需要の取り込みを図っており、製品戦略によって、日系企業の明暗が分かれている。今後、電動化による大変革の潮流の中で日系企業は、いかに内燃機関車(ICE)と電動車のすみ分けをしながら他社との差別化を実現できるかが、問われているのである。(論考は個人的見解であり、所属とは無関係です)

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事