高速鉄道「頓挫」でも懲りない中国のマレー戦略

マラッカ海峡を回避する戦略ルート「東海岸線」

ECRLは2017年夏に着工したものの、約1年後に政権奪取したマハティール前首相がECRLプロジェクトの中止を中国に向け宣言した。

東海岸線のルート概略図。クアラルンプール周辺のルートは変更の可能性もある(資料を基に編集部作成)

ところが中国にとって、緊急時の抜け道となるECRLが頓挫してしまうのは何としても避けたい。最終的にマハティール前首相が中国と交渉し、建設コストの圧縮と自社企業による土木工事への関与比率を上げることで妥結に持ち込んだ。現時点では2026年の開通を目指して建設が進んでおり、最高時速160kmの旅客列車をメインに運行することになっている。

ただ、「抜け道」といっても中国とマレーシアは国境を接しておらず、鉄道でつなぐとしても途中にタイやラオス、ベトナムといった国が横たわっている。この間を接続するため、中国は西南部の雲南省と、国境を接するラオスを縦断する鉄道新線の敷設を進めている。「中国・ラオス鉄道」はタイの鉄道との接続を前提とするとともに、最終的にマレーシアへの乗り入れも可能とするという。

中国の鉄道は東南アジアを席巻するか

中国・ラオス鉄道は全長422km。雲南省南部の中国国境の街・磨憨(モーハン)と接するボーテンとラオスの首都・ビエンチャンを結ぶ。最高速度は旅客列車が時速160km、貨物列車は120kmを想定しているという。中国側報道によると、同線にはトンネルが75本あり、距離にすると延べ198km。半分近くがトンネルの中という路線になる。

中国・ラオス鉄道のルート概略図(資料を基に編集部作成)

内陸国で国土のほぼ全体が山がちなラオスにとって、基幹交通網の整備は念願とも言える課題だった。鉄道の建設は2016年12月に開始。コロナ禍にもかかわらず建設は予定通り進んでおり、今年の年末には営業運転開始にこぎつけるという。

ただ、同鉄道の敷設資金のうち6割はラオス政府が中国輸出入銀行からの借り入れで賄い、残りは中国・ラオス合弁会社が出資するという形を取っている。また、建設は一貫して中国資本の企業が請け負っている。このため、「一帯一路」のインフラプロジェクトで危惧される「債務漬け」にラオスが陥る懸念もあるといえよう。

クアラルンプール―シンガポール間の高速鉄道プロジェクトは頓挫してしまったが、中国の東南アジア戦略により、2020年代後半にはASEANを取り巻く鉄道網は大きな変革を迎えることだろう。高速鉄道が実現しなくても、気づけば中国製の標準軌鉄道が東南アジア諸国を走り回るという事態になっているかもしれない。

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