河井案里氏、議員辞職に込められた「ある思惑」 4月に3選挙区で補選、全敗なら「菅おろし」も

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広島3区では、公明党が斉藤鉄夫副代表の擁立を決定。自民県連が公募で石橋林太郎県議の擁立を決めて与党内調整が続いていたが、2月5日に二階幹事長の裁定により、斉藤氏への一本化が決まる見通しだ。石橋氏は中国ブロックの単独比例1位で出馬する方向だ。

立憲など主要野党も同区に野党統一候補を擁立する構えで、与野党全面対決の構図となるのは確実だ。ただ、広島は保守地盤が強く、「危機感の強さで自公が一体となって戦えば負けない」(自民幹部)との声が多い。仮に克行氏が議員辞職して4補選となり、結果的に自民と野党の2勝2敗となれば、「菅首相や二階幹事長の責任論も出ず、政権危機も避けられる」(同)との思惑もある。

首相長男のスキャンダルも浮上

ただ、こうした「あからさまな党利党略」(立憲民主幹部)が透けて見えれば、有権者の反発を買って「かえって与党が傷口を広げる」(同)可能性もある。

衆院予算委員会では4日から新年度予算案の審議が始まった。野党側はコロナ対応の迷走だけでなく、案里、克行両被告の買収事件や与党で相次ぐ政治スキャンダルの追及に全力を挙げる構えだ。

3日夕刻には『週刊文春』が電子版で菅首相の長男にまつわる疑惑を速報した。4日発売の本誌は「総務省の谷脇康彦総務審議官ら幹部4人が昨年、衛星放送などを手がける会社勤務の菅首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する可能性のある接待を受けた」と報じている。

菅首相は3日夜、記者団に「まったく承知していない。総務省で適切に対応されると思う」と必死に平静を装った。今後、総務省幹部の処分問題に発展する可能性は大きいとみられている。

4日の衆院予算委員会で野党から追及された菅首相は、長男と電話で話したことを明らかにしたが、「長男は一民間人でプライバシーもある」と詳しい説明は避けた。そして、「国民に疑念を抱かせないよう総務省でルールにのっとって対応してほしい」と繰り返したが、事実関係でちぐはぐな答弁も目立った。

まさに「菅首相自身も火だるま状態」(自民幹部)で、「二階幹事長とともに統一補選まで求心力を維持できるかどうかも微妙」(自民長老)になりつつある。政局混迷の中で4月の補選に突入すれば、「与党の小細工など通用せず、本物の政局になる」(選挙アナリスト)との声も広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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