徹夜も上等!結局「猛烈に働く人」が成長できる リクルートがやたら「女性起業家」を輩出する訳

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――それだと定年までいてしまいそうですが。

30歳で辞めるというのは、3年目くらいで決めてたんです。4年目に異動の希望を出すときは辞めることを前提に、いろんな仕事を横断的に経験できるところがいいと思って、地方の事業・販売戦略を立てる支社統括という部署を希望しました。

そこで任されたのが「60億円の事業のうち、20億円分あった紙媒体の仕事をやめて、そのうえで事業規模を100億円に持っていく」という仕事でした。このときは、朝4時まで働いて、タイマッサージで2時間仮眠してまた仕事、みたい日々でした。でも途中、事業計画を固めた際から「できるかもしれない」という可能性が見えてきたから、寝ずに働けました。さすがに「こんな働き方は何年もできないな」とは思いましたけど。

――で、独立したのが6年目。

はい。28歳と6カ月のときですね。リクルートには約6年間、在籍しました。当時のリクルートは38歳が退職金のピークといわれ、30歳でも1000万円もらえました。「あと1年半いれば1000万円もらえるのに」と言われましたが、社員持ち株会で持っていたリクルート株を売ったお金と、それまでの貯金で2年くらいは食いつなげそうだったので、その前に辞めました。

「自分を食わせる」ことができれば起業はできる

――不安はなかったですか。

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「女性経営者を支援する仕事をする」というのは決めていました。独立する場合、フリーでこぢんまりやる方法と、ベンチャー・キャピタルなどから資金調達して大掛かりにやる方法がありますが、私は前者だったので。「6年間、あれだけ激しく営業や仕事をやってきたのだから、自分を食わすのに困ることはないだろう」という自信はありました。

起業というと「ビジネスモデルが」とか「ビジョンが」とかハードルを上げてしまいがちですが、そんなものはなくても、まずは自分を食わせていく。私の場合、最初の仕事は近所の喫茶店のおばちゃんに紹介してもらった女性経営者の会社のお手伝いでした。

そうやって小さな仕事をちょっとずつ集めて、いろんなところからお金をもらえるようにしていくのは、そんなに難しいことではないと思います。それで1人で回らなくなったら、何人か雇って小さくても雇用を生み出す存在になれればいい。

いま女性経営者がネットで交流する「女性社長.net」(2020年6月現在、会員約2800名)や、女性社長の祭典「J300」などをやっていますが、女性社長たちは「仲間がいない」「人脈がない」ことに悩んでいます。「弱者連合ですね」と言われショックだったこともあります。小規模でも個性ある会社同士で助け合って、雇用を生み出し守ることには意義があると思います。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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