テック業界に女性が進もうとしない根本理由 「ジェンダー平等と教育」ベニオフに学ぶ本気度

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私たちWaffleは、テクノロジー分野のジェンダーギャップを解決するために活動しています。テクノロジーは、古くから男性が多い産業で、無意識のバイアスが多くある世界です。

斎藤明日美(さいとう あすみ)/一般社団法人Waffle共同代表。1990年東京都生まれ。データサイエンティストとして外資IT企業・AIスタートアップを経て、IT業界のジェンダーギャップを是正すべくWaffleを立ち上げる。2020年Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞。アリゾナ大学修士卒(写真:本人提供)

例えば、初めてシートベルトができたとき、衝突試験を行うダミー体が男性の形のみであったため、男性よりも女性の安全率が低かったという話があります。そもそもシートベルトの形そのものが、妊婦さんには対応していません。同じテクノロジーを使っているのに、男性目線で開発が行われるため、男女で安全率の差が生まれ、命の重さに違いが出るのです。

医療に関しても、治験は男性の被験者が多く、薬の容量が男性サイズであったり、女性のほうが副作用が大きくなったりするという問題もあります。女性は妊娠への影響を保証できないため、治験の対象から外されるのです。マウス実験でもオスのほうが多いというデータがあります。

こういったことを考えると、今後ITのテクノロジーが増えていくにあたって、ジェンダーによって利益に格差がないようにしなければなりません。

2017年の初め、アマゾンが開発したAIを活用した人事採用システムが、女子大出身の候補者を除外するという差別を行うことから、開発が中止になるという出来事がありました。

アマゾンにもアルゴリズムにも女性差別の意図はないけれども、入力されたそれまでの採用データに偏りがあるために、出身校に女子大の名前があると、自動的に落とされてしまったのです。社会に差別や偏見がある状態でそのデータを取り込むと、アルゴリズムは非常にシンプルに差別を再生産してしまうわけです。

こういったことは、今後、企業責任の1つに入るようになるでしょう。

「ICT教育への興味」最下位の日本

テック業界のジェンダーの問題に対しては、日本はとくに遅れている国です。日本社会全体のIT化が非常に遅れており、日本の学生は、スマートフォンは持っていても、コンピューターの所持率は非常に少ないといった問題もあります。その中で、IT産業を目指す女子はさらに少なく、労働市場にも大学にも人材がいないのです。

国際学力調査では、日本の女子学生の成績はトップ10に入るレベルであるにもかかわらず、「ICT教育に興味がありますか」という意識調査をすると、「興味がある」と答えた女子は3%。男子でも7%で、どちらも63カ国中最下位。これでは人材は育ちません。

ITは今後必ず発展する業界なのに、そこに対して学生たちが学ぼうというインセンティブが少なく、教育が追いついていないのです。

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