埼玉・日高「メガソーラー法廷闘争」が招く波紋 豪雨被害や景観破壊恐れ、条例の規制強まる中で

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メガソーラーの建設をめぐって事業者と自治体の間で緊張感が高まっている(写真:Sky_Blue/iStock)
全国各地でメガソーラー(大規模太陽光発電所)の事業者と地域住民、自治体間のトラブルが多発している。「森林を伐採し太陽光パネルを敷くと豪雨被害が悪化する」「ふるさとの景観が損なわれる」――などの住民の懸念を背景に、メガソーラー出現を抑制する条例を設ける市町村が増加。一方、「条例は違憲」と裁判に訴える事業者も出てきた。自然エネルギーの普及拡大が急がれるなか、自然や地域との共生をどう図ればいいのか。

大雨の後、メガソーラー近くで斜面が崩落

埼玉県の真ん中、1市7町1村からなる比企地域では、数年前からメガソーラーの建設ラッシュが起きている。地域特有のなだらかな丘陵の山林は格好の事業地。再生可能エネルギーの固定価格買取制度改正により、認定を受けた時期によっては事業者に運転開始期限が課されることから、事業化を急ぐ事業者が多い。

昨年6月に運転を開始した埼玉県嵐山(らんざん)町のメガソーラー(発電出力1990キロワット)の近隣住民は、昨年10月に数日間にわたり大雨が続いた後、目を疑った。面積4万6000平方メートルの敷地にパネル9779枚を敷き詰めた事業地の南側斜面がざっくりと崩落していたのだ(写真A)。この写真には太陽光パネルが写っていないが、ドローンを使って撮影した写真を見ると、位置関係がわかる(写真B)。

A(左、近隣住民が提供)、B(右、近隣住民の敷地内より鈎裕之氏撮影)

(外部配信先では写真や表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

太陽光パネルが設置されている場所は、以前は森林だった。大雨が降った場合、森林には保水機能があるが、樹々がなくなると雨水は地面に浸透し、あふれた分は地面を流れる。太陽光パネルを設置する時には、降雨時の水の流れ方を考えた手当が必要になる。

崩落は、斜面の上にあった森林を伐採し、太陽光パネルを敷き詰めた際の造成工事が不適切だったことに起因すると住民は考え、事業者に対処を求めた。事業者側も対処を約束。ところが、1月末現在、崩落場所にはブルーシートがかけられ、補修工事は行われていない。

このメガソーラーは、建設にあたった事業者が大手建設会社に売却したため、売却先の大手建設会社が現在の発電事業者、保守点検責任者となっている。「補修工事はここを造成した事業者が行うことになっているが、工事の方法を決めるのに時間がかかっている。2月中には開始したい」と大手建設会社は説明する。

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