おこづかいを「無計画に」あげる家庭が危うい訳 成人年齢は18歳に引き下げ、マネー教育は急務

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「マルチ商法の被害っていうのは、今も変わらずありますね。ただ手口はどんどん変わります。あれって興味深いことに、問題になると3年から5年静かになって、ほとぼりが冷めるとまた残党の一派が始めたりするんです。

最近は、SNSなどを通じて起業セミナーに集まったあとの交流会で、高額商品を勧誘するマルチ商法の被害も若い人には多く見られます。短期間で大きく稼げると投資のノウハウを売りにするイカサマものや、新手の短期バイトを装ったものもあります。

これはたった1週間働いて10万円もらえるといったもの。ネット上の募集広告を見て行ってみると、振り込め詐欺のかけ子(電話する役)や受け子(高齢者宅に現金を受け取りに行く役)だったり。若い人がマネートラブルに巻き込まれやすいという点では、当時と変わりない状況です」

とのこと。先生はさらに続けて言います。

「民法改正によって、2022年4月からは成人年齢が20才から18才に引き下げられるので、18才になっていれば従来の未成年者取消権が使えなくなってしまいます。未成年者は、よくわからずにうっかり契約してしまっても、親が承諾していなかったと言えば契約の取り消しができるわけですが、18才は成人ですからできません。

悪質商法の被害の実態では、20才になったとたんに消費者トラブルに巻き込まれるケースが多く見られますから、それまでに契約を含めたマネー教育をしておく必要性が高まったと言えるでしょう。だから文部科学省の新しい学習指導要領では、小学校5年生で家庭科で『契約』について学ぶようになったんです」

以前よりますます若者をめぐる状況は危なく厳しくなり、契約に関する知識を持つこと、マネー教育が急務になっているということのようです。

借金に無自覚な若者

さらに先生は、若者が自分の抱えている借金に無自覚なことも心配だと言います。

「私は大学で全学部開放科目として『金融リテラシー入門』という授業を行っていました。教室で学生に『今、借金ある?』って聞くと、だいたいみんな『ない』って答える。それで『分割払いのものはないか?』と聞くと、それも『ない』って言う。

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でもね、大学生の99%はスマホを使っているのですが、そのスマホを実は分割払いで買っているんですよ。スマホの端末は5万~15万するものです。機種をこれと決めると今度はさまざまな料金プランが示されるので、わりと簡単に契約してしまいがちです。でも端末を即金で購入したのでなければ、クレジットで購入しているわけです。その分割金を2年間かけて返済していく。通信料と合算で毎月1万円とか引き落とされていくので意識は持ちにくいかもしれませんが、立派な借金なんです。

もう1つの無自覚な借金の代表が奨学金。あれは名前に反してそのほとんどが貸与で、実は借金。こちらは金額が大きいと、社会人になってから重い返済がのしかかってきますから、計画的に借りてほしいですね」

便利な世の中なので、知識がないと気がつかないうちに借金をしてしまうとのこと。お金に関するしっかりとした知識がますます必要になっているようです。

藍 ひろ子 教育ジャーナリスト

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教育ジャーナリスト。長年、出版社で雑誌および書籍の編集者として、育児・教育分野の仕事に携わったのち独立。著書に『する?しない?中学受験 迷ったときに』『誰も教えてくれなかった正しい子どもの育て方』(ともに主婦の友社)がある。また『0才からやっておきたい教育』(日本経済新聞出版)のスーパーバイザーを務めた。26歳の男子の母。

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