自分が切り開いてきた道を誰かに託したい、教えたいと思って要望すると、「そこまでは」と言われたり、仕事を任せれば「あなたのようにはできない」などと言われたりして、自分は部下から尊敬されていない、信頼されていないと落ち込んだことも、どうしたらいいだろうと頭を抱えたことも何度もあったはずです。
優秀なメンバーを腹心の部下に育てることができず、「マネジメントが不得手だ」などと会社から査定されたこともあったに違いありません。誰かに愚痴りたくても、共有する相手もいない。気づけば組織の中で独りぼっちだと感じることがあったとき、誰とお酒を飲んでいたのでしょうね。
きっとすばらしいビジネスセンスを持ち、強引にその道をこじ開けてきて、自分がトップになる組織を持てたのでしょう。なのに、周囲を見渡したとき、導いてくれる人もついてきてくれる人も誰もいなくて、みんなが自分を遠巻きに見ている。「いいのよ! 私には私のやり方があって、評価されてきたんだもの」「部下がなんと言っているかくらい察しがつくわ。言いたければ言えばいい、部下なんてコマよ」と、どんどんかたくなな気持ちになっていったのではないでしょうか。
上司を変えようとしても、意固地になるだけ
妄想がすぎるかもしれないけれど、そう考えると、(2)はないですね。彼女の立場になってみると、痛いくらいわかっている自分の課題について、「あなたのやり方は間違っていると思います」とまっすぐ言われても受け止められないと思うからです。私が彼女なら、「だから何?私のやり方がいやなら辞めてもらって結構」などと言ってしまい、自己嫌悪と孤独感でいっぱいの夜を過ごしてしまいそうです。
自分を振り返ってみても、女性メンバーは上司を見る目が鋭くて、厳しい傾向があるような気がします。「上司たるもの」といった意識が強くあるので、仕事の力だけでなく、人格的にも「上司は立派な人であるべき」と思ってしまうのです。だから、女性自身が管理職になる話があったりすると、「自分なんて、とてもとても!」「そんなすごい人になる自信はない」と本気で尻込みしてしまうことだってあります。そして、その対象が女性上司になると、「もしかして自分もああなってしまうのか……」と自分を重ね合わせ、より人格的なものに目がいって、一段と厳しく見てしまうのかもしれません。
上司も必ずしも「立派な人格者」ではないのです。課題をいっぱい抱えたビジネスマンにすぎず、管理職という役割を担っているだけです。ヒステリックな物言いや頭ごなしの叱責をしてしまったり、うまく褒めてあげられなかったりすると、「ああ、感情的になってしまった」「なんて今イチなんだ!」と、本当はとてつもなく落ち込んで苦しんでいる、と私は思います。そう思っているのだろうなぁと思いながら眺めると、少し優しい気持ちになれるかもしれませんよ。
あなたは彼女に見込まれていたのです。一緒にビジネスをつくっていけるメンバーとやっと巡り合えたと思ったのだと思います。それなのに、自分の課題についての会話に加わっていた、と知ったとき、きっとこれまでの部下たちと同じように自分から離れて行ってしまうのだ、と勝手に不信感を持ってしまったのでしょうね。彼女の悲しい、これまでの経験がそう感じさせてしまったのでしょう。
鬼上司が苦手な「マネジメント」を引き受けよう
私は、あなたは(3)をとってみたらいいように思います。「北風と太陽」じゃないけれど、彼女の仕事力のすばらしさはあなた自身が認めているのだから、そこに対する尊敬の気持ちを伝えてみたらどうでしょうか。できたら一緒に食事をしたりお酒を飲んだりして、意外とかわいらしい彼女の本当の人柄に触れてみるのもいいと思います。そして、彼女の苦手領域である「マネジメント」を引き受けてあげたらどうでしょう。
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