デキるはずの人が時々重大ミスをしでかすわけ 選択式試験で育たないのは論述力だけではない

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先ほど、マークシート式の試験では受験生が見直しをしないで寝ていると述べたが、そのことと社会人にとって重要な「見直し力」の関係を説明してみたい。

答案を見直す=「疑う力」を養う

よく雑誌などに、2枚の絵があって、「左右の絵には違いが5カ所あります。それを見つけてください。正解者には抽選で賞品を差し上げます」という間違い探しの問題がある。5カ所という具体的な数字まで挙げられていても、意外と全部は見つけられないものである。

その設問が「左右の絵には違う点があるかもしれません。もしあれば、それらをすべて指摘してください」となると、問題の難易度は格段にアップする。

前者のように「5カ所ある」という設問で4カ所見つかったときには、読者は「あと1つ」という気持ちで必死に絵を見直すだろう。

後者では、4カ所くらい見つかると、「これ以上はないだろう」と、どうしても気の緩みが出てしまう。そうした気持ちを抑えて5カ所目を探さなければならないため、難易度がアップし、正解率も低くなる。そこでなお「疑いの気持ち」を持って見直した人だけが、賞品を手にできるのである。

答案を見直すことは、実はこうした「疑う力」を養うトレーニングになっている。絵の間違い探しはお遊びだが、それでは次の問題を読者はどう考えるだろうか。

問題:定食が税込で1000円の店がある。ただし、22時以降は深夜料金として昼の1割増しになる。この店がある日、開店10周年記念として全商品を通常の支払い額の1割引にした。その日の深夜に定食を注文したお客は、いくら支払うことになるか。

「1割増しの深夜料金から1割を引くから結局1000円」という計算が頭をよぎった読者もいるのではないだろうか。答えは、1000×1.1×0.9=990(円)である。

この問題の場合、直観的に浮かんだ答えを冷静に見直せば、正解に至るのはそれほど難しくない。要は、「疑いの気持ち」を持つかどうかである。

この問題の設問をマークシート式にして、[ア][イ][ウ]円とするとどうなるか。うっかり1000円という答えを出した生徒に対して、「それは間違っていますよ」というヒントを出すことになり、生徒が「疑いの気持ち」を持って考える機会はなくなってしまう。

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