表面的なDXの末路「リモートで成果が出せない」 6000人の在宅勤務を可能にするデジタル組織
リモートワークを実現し定着させようと思うなら、DX、とくに守りのDXが進んでいることが必須である。
リモートワークという制限のある状態では、仕事の品質とスピード、その継続性を確保することが難しいからだ。人と人、チームとチームが連動して仕事をしていくために、対面で会話してすり合わせをすることも、エレベーターや休憩室での雑談でコミュニケーションギャップを埋めることも難しい。加えて、だれがどのようなアウトプットをしているかもわかりにくい。
つまり「仕事が進まない」うえに、「仕事がどれだけ進んでいるのか/いないのかを確認する」方法すらないのだ。
そのため、コミュニケーションをとるために、「週に○回は必ず出社」「在宅勤務は週○日まで」などと決めている会社も多い。新型コロナによる緊急事態宣言が解除された2020年6月以降、原則、全員出社に戻った企業もあると聞く。
しかし、DXをしっかり進めていたら、リモートワークでも十分にコミュニケーションがとれるようになっているはずだ。DXを真剣に推進している企業は、組織、ビジネスモデルの見直しが行われ、コミュニケーションの再設計が進んでいるはずだ。DXの推進にあたっては、サービス型チームの導入が有効である旨を、前回述べた。サービス型チームの特徴は、役割分担が明確になっていること、人やチームの連動性、つまり「解像度の高い」コミュニケーションがとれていることだ。
リモートワークであっても、チーム全体とメンバー各人に望まれているアウトプット、その進捗状況がクリアになっている。たとえ、問題が起こったとしても、コミュニケーションの解像度が高いために、早いタイミングでそれに気づくことができる。その結果、リモートでも対面でも変わらない調子で仕事を進められる。
デジタル技術の導入をしただけの、表面的なDXでは、リモートワークはうまくいかない。リモートワークを実施するものの、「コミュニケーションが不足」「成果がでない」「仕事が進まない」ということで、結局、リアルでの打ち合わせが必要となり、出社が推奨されるようになるはずだ。そもそもリアルでもコミュニケーションの解像度が高くない仕事のやり方をしている組織や会社は、今まで以上にシンドイ状況なのだろう。
6000人規模のリモートワークを実現
筆者が執行役員としてDXを推進しているKADOKAWAグループでは、6000人規模でリモートワークを実施している。日本で新型コロナの感染が大規模になる前の2020年1月にはこのリモートワーク環境が整っていた。
もちろん、直前には、PC、モニター、アプリケーション、ネットワークを整備し、リモートワークのためのガイドラインの見直しも必要だった。しかし、それだけではない。
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