電子部品メーカー「売上急回復」と「株高」のなぜ 25日から決算発表本格化、注目の車載向け動向

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新型コロナによってサプライチェーンが寸断した経験を受けて自動車メーカーの間で部品在庫を積み増す動きが起き、それが電子部品メーカーの売り上げ回復につながっている。モーター世界最大手・日本電産の車載向け事業の営業利益は、2020年4~6月期に3億円の赤字に転落したが、同7~9月は47億円の黒字に回復した。

1月下旬から始まる電子部品各社の決算発表で注目されているのが、スマホ向け部品の売り上げ動向だ。アメリカ政府は2020年9月、中国の通信機器大手ファーウェイへの輸出規制を発動した。当初、ファーウェイと取引のある電子部品各社の業績に影響が出ると懸念されたが、今のところ部品メーカーには大きなマイナス影響を与えていない。

ファーウェイ規制の影響は軽微

多くの日系電子部品メーカーは、アメリカのアップルや韓国のサムスン電子、中国のOPPOなどファーウェイ以外のスマホメーカーと取引があり、ファーウェイ向け売り上げが落ちても他社向けで挽回できる。2020年10~12月期はむしろ、ファーウェイへの輸出規制が電子部品各社に好影響を与えた。ファーウェイのシェアを奪うためにライバル各社がスマホの生産台数を増やし、電子部品各社に「過熱気味に相当の受注がきている」(中島氏)のだ。

例えば、TDKのスマホ向けバッテリーなどを手がけるエナジー応用製品セグメントは、2020年10~12月期の売上高が前年同期比24~28%増になりそうだ。TDKの2021年3月期業績は、スマホ向け売り上げの想定以上の回復を理由に、売上高1兆4000億円(前年比2.7%増)、営業利益1100億円(同12.4%増)と見込まれている。

ただ、電子部品メーカーの業績回復がこのまま続くかについては意見が分かれる。村田製作所の中島社長は、スマホ各社からの受注が過熱気味だったことから、「第3四半期(2020年10~12月)は大きな売り上げに結びつくが、2021年2~3月に調整局面に入るだろう」と話す。

回復途上にあった車載向け部品でも懸念が高まっている。世界的に半導体需給が逼迫し、自動車メーカーは自動車の減産を強いられている。ある中堅電子部品メーカーの役員は「車載向け部品の受注は(1月に入ってから)想定を下回り始めた」と明かす。車載向け部品の売り上げが想定していたよりも回復しない可能性はある。

1月25日から本格化する電子部品各社の決算発表で、短期的な懸念に対応しつつ、中長期の成長を見据えた経営方針を示すことができるのか。日本勢が世界シェア約4割を占める電子部品産業の動向は日本経済にとっても大きな焦点となりそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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