フランスも苦悩「コロナでハメ外す若者」の怖さ 極度のストレス?違法ダンスパーティーが続発

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筆者の周囲にもコロナ感染した若者がいるが、皆、まったく怖がっていない。無症状のまま回復する場合が多く、友人の家に集まる場合マスクはしていない。むしろ「感染で抗体ができたから最強だ」などと大手コンサル企業に勤める友人の男性は言い、コロナへの恐怖心がまったくない。

それにコロナ対策の補償が手厚いフランスでは、1月14日に明らかになった政策によると、例えば、レストランやカフェに関係する卸売業者、納入業者などのうち、売上が70%以上減少している企業は、連帯基金から、月20万ユーロ(約2500万円)を上限に2019年の売上の20%に相当する額の給付を受けることができる。

休業措置の対象となっている企業およびそれらに関連するセクターに属する企業のうち、月の売上が100万ユーロ(約1億2600万円)を超える企業に対して、固定費の70%を支援する。この支援は連帯基金に上乗せされるもので、2021年1月から6月までの間に300万ユーロを上限として実施する。300万ユーロは出発点で、この上限額を引き上げるために欧州委員会と交渉中だ。

会社員の給与保障も1回目のロックダウンの2020年3月から5月のときと同様、継続しており、一気に経済困窮者になる状況にはない。フランス政府はこれまでも厳しい罰則を盛り込んだコロナ対策を実施すると同時に、政府の経済補償の細かな内容も説明しながら国民の理解を得ようとしてきている。

個人の自由を優先する国民性がネック

2021年1月20日、リモート授業を強いられている大学生が対面授業を要求し、生活の困窮を訴え全土で抗議デモを行った。マクロン大統領は学生を大統領府に呼び、1日2食を1ユーロ(約125円)にするチケット発行やメンタルサポートの費用支援を約束した。だが、大学でのクラスター発生懸念から全面的な対面授業再開には応じなかった。

政府は、集団免疫のためにも、若い世代にワクチン接種の必要性をどう理解してもらうかが、今後の大きな課題としている。フランス政府は十分とはいえなくとも現状把握に努め、きめの細かな補償を盛り込んだ対策を、大統領、首相、関係閣僚が科学的根拠を示しながら講じてきた。

それは2020年3月下旬、最初のロックダウンを発表したときに、マクロン大統領が「これは戦争だ」と言ったメッセージにも明確に表れている。

問題があるとすれば、日本と違い、個人の自由を優先する国民性から若者を中心に政府方針になかなか従わないことで、感染が拡大していることだ。若者の良心に訴えるだけでは限界がある。さりとて、若者だけを対象とした罰則強化は国民の合意を得られない可能性もあり、政府の葛藤が続いている。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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